今やピアノレッスン業界では欠かせない存在となっているギロック。
そのギロックによるピアノの基礎教材を紹介します。
ギロックはアメリカのピアノ教育者であり作曲家です。
「音楽教育界のシューベルト」と言われるほど、魅力的な曲をたくさん作っています。
ギロックについては、こちらの記事でも紹介していますのでご覧ください↓
ギロックはこれからピアノを始める人のための導入テキストとして、「ピアノ・オール・ザ・ウェイ」というものを作っています。
ピアノのはじめの一歩からギロックが作曲した曲で学ぶことができる魅力的なテキストです。
「ピアノ・オール・ザ・ウェイ」についてはこちらに紹介しています↓
今回紹介する「アクセント・オン①②」は、導入テキストを終えて、楽譜を読むことができるようになった初級から中級レベルの方向けのテキストです。
どのような内容でしょうか。
早速紐解いていきます!
ギロック アクセント・オン①②
「アクセント・オン」シリーズはアメリカでは5巻出版されています。
日本ではそれを2冊にまとめて日本語版にして出版されました。
アメリカで出版されているのは以下の5冊です。
- アクセント・オン「メジャーズ」(長調)
- アクセント・オン「メジャー・アンド・マイナーズ」(長調と短調)
- アクセント・オン「ブラックキーズ」(黒鍵)
- アクセント・オン・アナリティカル「ソナチネ」
- アクセント・オン・アナリティカル「リズムと音楽スタイル」
巻が進むにつれて難易度が上がっていきます。
レベルとしては導入を終えて初級ぐらいから使うことができます。
他のギロックのテキストでいうと、
「ピアノ・オール・ザ・ウェイ」レベル4や、
「はじめてのギロック」後半
頃から併用することができます。
それぞれの内容を見ていきます。
アクセント・オン①
こちらは以下の3つの本が一冊になっています。
- アクセント・オン「メジャーズ」(長調)
- アクセント・オン「メジャー・アンド・マイナーズ」(長調と短調)
- アクセント・オン「ブラックキーズ」(黒鍵)
アクセント・オン「メジャーズ」(長調)
副題は次のように書かれています。
初級レベルのための作品集
7つの白鍵を主音とした7つの長調
そして、その調号を理解する理論ワークブック
曲に入る前に、調、音階、和音、カデンツの解説があります。
そして、調号がつく順番を5つまで覚え、実際に弾いていきます。
1つの調につき次のことがセットになっています。
- 音階の鍵盤図
- 音階練習
- 主要三和音
- カデンツ
- 曲
これらのセットが、白鍵を主音とする7つの長調で登場します。
アクセント・オン「メジャー・アンド・マイナーズ」(長調と短調)
副題は以下の通りです。
初級後半レベルのための作品集
7つの白鍵を主音とした同主調の長調と短調
そして、その調号を理解するワークブック
こちらも曲に入る前に解説のページがあります。
ここでは短調の音階についての解説が加えられていることと、
調号の数が5つから7つなっています。
またひとつの調につきセットになっているものが、「メジャー」にはあった音階練習が無くなります。
- 音階の鍵盤図
- 音階の楽譜(指番号や拍子記号なし)
- 音階和音
- 正格カデンツ
- 曲
これらのセットが白鍵を主音とする7つの長調と短調で登場します。
つまり全部で14の調を学びます。
アクセント・オン「ブラックキーズ」(黒鍵)
副題は以下の通りです。
中級前半レベルのための作品集
5つの黒鍵を主音とする同主調の長調と短調
そして、その調号を理解する理論ワークブック
こちらでも曲に入る前に解説があります。
ここでは、調と音階に加えて、増三和音と減三和音の説明が加わります。
調ごとのセットは「メジャー・アンド・マイナー」と変わりません。
これが10セットあり、10の調について学びます。
アクセント・オン②
こちらは、以下の2冊が一冊にまとまっています。
- アクセント・オン・アナリティカル「ソナチネ」
- アクセント・オン・アナリティカル「リズムと音楽スタイル」
アクセント・オン・アナリティカル「ソナチネ」
ギロック作品の三楽章からなるソナチネが3曲収録されています。
それぞれの楽章のはじめに、形式とアウトラインが示してあります。
そして曲を練習するときに分析して、以下の部分を楽譜に書き込むように指示があります。
- 形式の各部分(提示部や、第一テーマなど)
- 「対照」「変奏」「反復」に当たる部分
独学の人はまずそれぞれの形式や用語について学んだ後に、実戦としてこちらのテキストを使うことをお勧めします。
アクセント・オン・アナリティカル「リズムと音楽スタイル」
こちらは、全7曲です。
音楽スタイルというのは、その曲が作られた時代のことでもあります。
ここでは4つのスタイルに分けています。
- バロック・・・1600年頃〜
- クラシック(古典派)・・・18世紀後半〜
- ロマンティック(ロマン派)・・・19世紀
- モダン(現代)・・・20世紀
こちらのテキストの最後に各スタイルについての解説があります。
ポイント1:ワークブック形式になっている
楽譜に書き込むことを前提としています。
書き込み、学びながら、演奏する形です。
「アクセント・オン①」では、楽譜は調号(#、♭)がすべて抜けている状態で、自分で書き込むようになっています。
不完全な楽譜を完成させてから演奏します。
そこにはギロックの思いが反映されていて、「はじめに」に書かれているギロックの言葉で以下のようなものがあります。
理論は、すぐに応用できなければ、一銭の価値もない
「アクセント・オン①」p2、全音出版
理論と実践を同時に一冊で行おうということがギロックのねらいです。
ポイント2:調の勉強と実践を一緒にできる数少ないテキスト
ハ長調、ト長調、ヘ長調・・・など音楽には全部で24の調がありますが、導入テキストでは、途中までしか触れられていなかったり、ほかのことと一緒に学ぶので、大枠を掴みづらいことがあります。
アクセント・オン①では、調について的を絞り、実際に演奏しながら学ぶことができます。
しかも、ただの音階練習ではなく、ギロックの魅力的な曲と共に学べるので、自然と身についていくのではないでしょうか。
ただし、理論書ではないので、詳しい理論があったほうが理解しやすいという方は、音楽理論の本と併用することをお勧めします。
こんな人におすすめ!
- 調について演奏しながら学びたい人
- 形式について演奏しながら学びたい人
- ギロック作品が好きな人
- 分析することが好きな人
- 学ぶことが好きな人
- 初級レベルを終えて次の段階に行きたい人
テキスト概要
- 「ギロック アクセント・オン」①②
- 全音出版社
- 1996年出版(日本語訳)
- 著者:ウィリアム L. ギロック
- 訳・解説:安田裕子
- 曲数:全41曲
- アクセント・オン①…31曲
- アクセント・オン②…10曲
- レベル:初級〜中級レベル
楽しいピアノライフを!
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。