江口寿子さんのすくすくミュージックすくーるシリーズのレベルBに位置する「おんぷの学校」シリーズです。
1991年に出版されました。
すくすくミュージックすくーるはレベルAからレベルDまで設定されていますが、実際にピアノに触れて演奏するのは、レベルBのおんぷの学校からです。
こちらの教本を紐解いて紹介していきます!
すくすくミュージックすくーる おんぷの学校
著者の江口寿子さんは、一音会という音楽教室を主催されています。
一音会は現在活躍されているピアニストの藤田真央さんや、反田恭平さんが子どもの頃に通われていた絶対音感プログラムを持った音楽教室です。
江口寿子さんのメソッドはA~Dの4つのレベルが設定されています。
レベル設定
レベルA
- おうたの学校 全2巻
- おみみの学校 全2巻
- リズムの学校 全2巻
レベルB
- おんぷの学校 全6巻
レベルC
- ピアノの学校 全6巻
レベルD
- スケールの学校 全6巻
- 音楽の学校 全6巻
レベルBからピアノの演奏を始めます。
さらに、「おんぷの学校」シリーズは、3つのパートに分かれています。
「おんぷの学校」の3つのパート
おんぷの学校1、2
- 五線の読譜に入る前の準備をします。
- ピアノを弾くときに必要な知識と技術を身につけます。
おんぷの学校3、4
- 五線上の音符を読む練習をします。
- 音を読む「音名読み」の練習をします。
おんぷの学校5、6
- 複数の音の関係を読む「模様読み」の練習をします。
「模様読み」という耳慣れない言葉が登場しました。
この「模様読み」がおんぷの学校シリーズの特徴でもあります。
「おんぷの学校」の「はじめに」をみてみると、「すくすくミュージックすくーる」シリーズの目標を次のように述べています。
この「すくすくミュージックすくーる」シリーズは、小さな子どもでもその日から楽しめ、少しの練習でじょうずになれて、誰の力も借りずに一人で、ピアノをつかって自分を表現できるようになること、つまり、”音楽的自立”というい究極の目標を目指す方法論です。
おんぷの学校 1 「はじめに」より
音楽的自立を目指すピアノのはじめの一歩となる「おんぷの学校」シリーズのポイントを紹介いたします!
ポイント1:手を見ないで演奏する
1、2巻では、五線譜やト音記号などの、楽譜は出てきません。
鍵盤の場所を覚えて、絵音符をつかって演奏を始めます。
ドはどんぐり、レはレモンというように、絵を見て、その場所を演奏します。
その方法で、身につけるものは、ピアノを弾くときに必要な知識と技術です。
巻頭ではピアノを弾くときに必要な知識として以下のものを挙げています。
- 白と黒の区別
- 左右の手の区別
- 指番号
- 音の名前
- 2つと3つの区別
- 1から5までの数字の区別
- 音階の順番
また、ピアノを弾くときに必要な技術として以下のものを挙げています。
- 音符の玉を目で追う
- 手を見ないで演奏する
- 手を見ないで手を適切な位置に保つ
- 手を見ないで正しい鍵盤の幅をとる
- 正しい拍をたもつ
- これらの技術を瞬時に組み合わせる
ピアノの演奏の技術として、「手を見ないで」というのを掲げているのが特徴です。
鍵盤のひとつずつの幅を感覚的に覚えて、基本的な手のポジションを身につけ、音符の玉の動きに合わせて、指を見なくても動かせるように、練習をします。
そうすることで楽譜を読んで弾くことをスムーズに結びつけます。
このことは教本には書かれていることは少ないですが、ピアノの上達には必ず必要になります。
たくさんの曲を弾くうちに、鍵盤の幅は次第に覚えていきますが、
楽譜を読むことと、指を動かすことが連動するのは自然には身につきません。
楽譜を読み、音を覚え、指と鍵盤を見て、目で確認しながら演奏するというやり方をしていると、初級程度はこなすことができても、あるレベルまでくると壁を感じるようになります。
演奏に結びつくまでの過程が多いので、弾くことが難しく感じてしまうのです。
そのことを避けて、楽譜を読むことと指を動かすことをスムーズにするために、はじめの段階から身につけていきます。
ポイント2:かたまり読み
3、4巻では、実際に五線の楽譜をつ使って音符を読んでいきます。
しかし、まだ完成された楽譜ではなく、簡略化された音符を使います。
音の高さ(ドレミ)に注目しやすいように、音のながさ(リズム)が見た目でよりわかりやすいように、省略された形の音符です。
その音符を使って、音の名前を読む練習をしていきます。
その方法が、音符をパターンとして覚える「かたまり読み」という方法で読みます。
「おんぷの学校3」の巻頭「おんぷの学校3巻について」では以下のように図で説明しています。
また同じく「おんぷの学校3巻について」でかたまり読みについて説明しています。
この「おんぷの学校」3巻と4巻では、(中略)「音名読み」の練習をします。
このとき、音符のかたまりをパターンとしておぼえる「かたまり読み」という方法で読みます。
パターンをおぼえる力は人間の成長過程で子ども時代に一番強くはたらく力で、「かたまり読み」はそのパターン認知力を読譜に利用する方法です。
発達にあった自然な方法なので、子どもにとって一番やさしい読譜の方法です。
「おんぷの学校3」 「おんぷの学校」3巻について より
ただ覚えるのではなく、パターン認識で自然に身につけていくので、無理なく導入することができます。
ポイント3:模様読み
かたまり読みで音の名前を覚えたら、5、6巻では「模様読み」の練習をはじめます。
「模様読み」とは複数の音の関係を読みます。
おんぷの学校5巻の巻頭には以下のように説明されています。
「模様読み」の練習は、まず音程の学習からはじまります。そこで、この「おんぷの学校」5巻と6巻では、1度から5度までの音程の学習をしながら、簡単な「模様読み」の練習に進んでいきます。
「模様読み」ができるようになれば、たくさんの音の中から、意味のある音のかたまりをさがすことができるようになります。そのことによって、曲がどのように構成されているかがわかったり、どのように表現すれば良いかがわかるようになります。
つまり、楽譜に書いてある音をただピアノで弾くだけなら「音名読み」だけですみますが、音楽のしくみをわかりながらひくためには、「模様読み」がどうしても必要なのです。
おんぷの学校5 「おんぷの学校」5巻について より
音符を個別の音としてではなく、前後のつながりを見て、模様として読むことで、音楽のしくみに注目することに繋げます。
ただ音を1つずつ弾けるようになることではなく、音楽的自立を目指して、必要な技術を身につけていきます。
この教本に足りないこと
- 音符を読むことに特化していて、ピアノを弾く姿勢や手の形などには触れられていない
- 音色についても触れられない
こんな人におすすめ
- ピアノの上達に必要な効率的な楽譜の読み方を学びたい人
教本概要
- 「すくすくミュージックすくーる おんぷの学校」1〜6
- 1991年出版
- 著者:江口寿子
- 併用テキスト
併用曲集として、「どれみふぁどんぐり1、2巻」「ぱたん・ぱたん1〜4巻」の6冊
併用ドリルとして、「ピアノのドリル 導入用〜2B」の5冊
併用副教材として「ぴあのはかせ」「かたまりよみカード」「もようよみカード」の3つ - 曲数:全6巻98曲
1巻15曲
2巻15曲
3巻19曲
4巻19曲
5巻15曲
6巻15曲 - レベル:導入レベル」
楽しいピアノライフを!
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。
“導入教本紹介「すくすくミュージックすくーる おんぷの学校」1~6【子ども向け編#14】” に対して3件のコメントがあります。
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