今回は、ブルグミュラー25の練習曲5曲目「無邪気」の難しさ、弾きやすさを分析していきます。
弾きやすいポイント
右手はとなりの音(2度)を弾くことが82%と多い
「無邪気」の右手では、音が飛ぶことが少なく、となりの音を弾くことが多いです。
となりの音(2度)が全体の82%を占めます。
次のグラフはブルグミュラーの8曲目までの右手の次の音との音程の全体に占める割合を示したものです。
どの曲も2度が最も多いということがわかりますが、その中でも「無邪気」が最も2度が占める割合が多いです。
2度が多いということは、まず楽譜が読みやすくなります。
隣に音が移っていく楽譜は、音の名前が分からなくても弾くことができますので、譜読みが比較的ラクにできます。
音のパターンが12回くりかえされる
次のような音のパターンが曲の中に12回登場します。
となりの音に降りていく4つの音のまとまりです。
例えば曲の始まりから8小節間を弾くと次のようになります。
この8小節で同じパターンが9回、鏡のようにひっくり返した形が2回出てきます。
速さがBPM=112で、曲集の中で3番目の遅さ
ブルグミュラーが指定している速さが♩=112という速さです。
1拍が112というのは、ブルグミュラーの25曲の中で3番目にゆっくりな速さです。
(ちなみに最もゆっくりな曲は「8.優美」と「19.アベマリア」で♩=100です。)
速度指定の記号は「Moderato」で、中くらいの速さです。
イタリア語のModeratoには、「適度な」や、「穏やかな」「ちょうどいい」という意味があります。
16分音符が多く、楽譜に音符が詰まっているように見えますが、実際には穏やかに落ち着いた曲です。
(6/8拍子の曲で付点四分音符=66という表示がありますが、6/8拍子に置ける付点四分音符は3拍分なので、1拍に直すとBPM=198となります)
左手に16分音符は0
音符が多い印象の楽譜ですが、ほとんどが右手に任されています。
16分音符は左手には1度も登場しません。
左手で最も速く弾く部分が八分音符で、八分音符は1秒間に3回弾く速さで、比較的ゆっくりした部分です。
左手の4割近くが1小節同じ音をのばす
左手の1小節すべて同じである小節が6小節あります。
3拍同じ音をのばすか、1拍弾いてその後に休符になるかのどちらかの小節です。
この曲は全部で16小節(繰り返しをカウントしない場合)なので、4割近くが1小節同じ音ということになります。
左手のポジション移動は3回だけ
ここでいうポジション移動というのは、指ごえ、指くぐり、指広げ、指縮め、同音指替え、スライド移動の6つです。
このポジション移動を使うことで、広い範囲の音や、様々な音のパターンを弾くことができます。
レベルが上がるほどポジション移動のテクニックは増えて行く傾向にあります。
これらのテクニックが、「無邪気」の左手では3回しか出てきません。
同音指替えが1回と、スライド移動が2回です。
次のグラフは、ブルグミュラーの8曲目までの左手のポジション移動の数です。
無邪気が最も少ないことがわかります。
ここまで見ると、左手がとても弾きやすく簡単であると言えます。
つまずきやすいポイント
ここでは演奏を難しく感じてしまう部分をまとめます。
つまずきやすく難しい部分というのは、見方を変えると曲が映える部分でもあります。
漠然と「なんだが弾きづらい」と感じるだけではなくその理由を理解して、より魅力的な演奏につなげていきましょう。
16分音符は1秒間に6~7つ弾く速さ
これまで見たように、左手が難易度が低いのに対して、右手は早い動きや、ポジション移動が多くあります。
右手に多く出てくる16分音符の速さは、1秒間に6〜7個の音を弾く速さで、かなり素早い動きが必要です。
へ長調という♭が1つある調で、となりの音が繋がった音の階段を素早く弾くクリアに弾くということがこの曲の最も勉強になる部分の1つです。
この曲を習得することで広範囲に流れるような音を表現することができるようになります。
臨時記号が9つ
曲の途中で出てくる#・♭(へ調固有の音であるシ♭の♮を含む)が右手に5つ、左手に4つと、ここまでの1〜5曲の中で最も多い数になります。
臨時記号は前半に集中していて、黒鍵へハードルを感じる方は抵抗があるかもしれません。
臨時記号があることで、より彩り豊かな音色につながるので、ここで1つステップアップできる捉えて、取り組まれるといいでしょう。
概要
最後に数字で見た「無邪気」をまとめました。
参考までにご覧ください!
拍子 | 4/4 |
全部の音の数 | 444(繰り返しなしの場合222) |
小節数 | 32(繰り返しなしの場合16) |
調号の数 | 1 |
臨時記号の数 | 9 |
曲の中で1~3度が占める割合 | 右手97%、左手9993% |
演奏時間 | 51秒 |
速度 | モデラート |
BPM | 112 |
16分音符を1秒間にいくつ弾くか | 6~7 |
同じリズムが出てくる小節 | 右手18小節、左手14小節 |
指くぐりごえ | 右手6回、左手0回 |
指縮め | 右手5回、左手0回 |
指広げ | 右手2回、左手0回 |
同音指がえ | 右手13回、左手1回 |
楽しいピアノライフを!
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。
“ブルグミュラー「5. 無邪気Innocence」の難易度を数字で分析!【ピアノ中級】” に対して1件のコメントがあります。
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