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ここでは「ピアノを弾くからだシリーズ 黒河好子のPianoサプリ♪ さぷりキッズ」を紐解いていきます。

いったいどのようなテキストなのでしょうか?

おすすめポイントと内容を詳しくみていきます。

さぷりキッズ

ポイント1:体の正しい使い方と、導入時期の重要なテクニックを身につける

「ピアノは上手く弾けなければ楽しくありません」という著者の言葉にあるように、ピアノを楽しむために上手く弾けるようになるテクニックを導入の段階から身につけていきます。

導入解説本には「正しい」という言葉が多く出てきます。

指、腕、筋力など体があるべき姿が乱れずに合致している状態で、ピアノの第一歩から踏み出せるように作られています。

指の構造を考え3番の指から弾き始めることや、わかりやすい「中央のド」からではなく、腕や肩に無理がない位置から弾き始めることも、この「正しい」テクニックのためです。

ポイント2:細やかな鍵盤コントロール

第二巻の途中で、同音レガートが登場します。

初級者でなくても難しい同じ音でのレガート演奏のテクニックとして、鍵盤を途中まで上げて音が消える直前で止まる練習をします。

これを通して鍵盤を「弾く」「離す」という二つだけではなく、鍵盤の沈み具合に意識が向き、細やかな指のコントロールによる鍵盤への多様な対応が養われます。

ポイント3:「どお」「れえ」「みい」で歌う重要性

このテキストのユニークなことの一つに母音と子音を「どお」「れえ」というように読み、声に出しながら演奏することです。

いずれ口は動かしても声を出さないようにしますが(口を動かすことで筋力を動かす)、小さいうちは声を出して弾きます。

このようにする利点は次のようなものがあります。

  • 音と音の間を意識する・・・音と音の間に何をするかで音色が決まってくると言います。母音を言うことで、その「間」を意識することにつながります。
  • テンポ感を身につける・・・母音を言うことで拍の「ウラ」を感じやすくなります。メトロノームとは違う音楽の流れを感じることができます。
  • 母音「お」「え」のところで次の音の準備をする・・・テキストの中では、次の音への準備を母音のところで行うことで、タイミングを取りやすくなります。

ポイント4:苦手なことの芽を早めに摘み取る

テキスト全体を通して、将来苦手に感じだり苦労することを作らないように、導入の段階から対策していくように構成されています。

このテキストに足りないところ

導入解説本にもあるように、練習曲には、子どもの体に合わせた音域や弾き方に重点を置いているため、自然なメロディではない箇所があります。

その他、著者がこのテキスト以外で学ぶようにと進めている点は以下のものです。

  • 「さぷりキッズ」と並行して導入期に大切なこととして、譜を読む、音楽を聴く、感性を磨くなどが挙げられています。
  • 譜読みのトレーニングは他の教材を使って行うように。

こんな人におすすめ

  • とにかく正しいテクニックを身につけることを重視したいこれからピアノを始める人や指導者。
  • 子どもの体を理解してテクニックの指導をしたいピアノ指導者。

詳しい内容は?

著者はピアニストで指導者でもある黒河好子さん。2012年に出版されたピアノテクニックの導入本です。

全2巻で、それとは別に指導者用の導入解説本があります。

導入解説本を手掛かりに内容を紹介していきます。

対象

2〜3歳で頃から使用可能。

大人になってから初めてピアノを習う方にも効果的。

できるようになること

指の機能を分析し正しい弾き方正しい筋力のつけ方を初期のうちに学び、ピアノを弾くときに大切なテクニックを最初から正しく身につけていくことができます。

導入解説書に著者のテクニックに対する思いが感じられる箇所がありますので引用します。

一番危険なことは、いきなり音を覚えさせ、何も準備をしないままピアノで音を出させることです。

そうすると体にとても力が入ってしまいます。

正しい弾き方を、ピアノを弾く前にトレーニングすることが大切です。

「ピアノを弾くからだシリーズ さぷりキッズ」黒河好子著 8ページ

特徴

他のテキストとは違う「さぷりキッズ」の独自性としてあげられていることを紹介します。

  • 3の指から始める・・・無理な力がかかりにくい3の指から始めます。
  • 「中央ド」から始めない・・・子どもの腕や肩に無理のない位置にある鍵盤から始めます。
  • 大譜表から始める・・・いずれ大譜表で弾くことを想定して、目を慣れさせます。
  • 楽譜が小さい・・・小さい楽譜に慣れている方が将来譜読みに苦労しないようになります。
  • 子音と母音を言いながら弾く・・・音の「ウラ」を感じること、テンポ感を感じることができるようになります。
  • 3/4拍子から始める・・・日本人が苦手な3拍子から初めて、苦手を克服します。

さぷりキッズ①

第1巻は「ピアノを弾く前に」と「ピアノを弾いてみましょう」という二つの部分に分かれています。

ピアノを弾く前に

まずはじめにピアノを弾くために必要な体への意識から始めます。下に、目次と解説書の言葉を並べます。

  • しっかりとたってみましょう・・・姿勢と脱力のための足の筋力
  • 手首を回してみましょう・・・手首の関節の動き、音の響きを作る
  • 手のかたちを作りましょう・・・正しいフォームのための準備
  • 指を動かしてみましょう・・・指の運動1
  • 指先を意識してみましょう・・・指の運動2
  • 指で数えてみましょう・・・離鍵の準備、速い動きの準備
  • ピアノを叩いてみましょう・・・腕の動いを覚える
  • ピアノを弾かせてもらいましょう1・・・指先の意識
  • 目を動かしてみましょう・・・目の動き、姿勢
  • 小指を動かしてみましょう・・・5指の運動、5の指の付け根の筋力の強化
  • 色々な顔をしてみましょう・・・表情筋
  • にらめっこをしてみましょう・・・集中力、指先の意識
  • ピアノを弾かせてもらいましょう2・・・指先の意識
  • 指を開いてみましょう・・・指の筋力
  • ピアノを弾かさせてもらいましょう3・・・指先の意識
  • 音が消えるまで聞きましょう・・・集中力、音の響きを聴く
  • 指や指先に力を入れましょう・・・右と左の力の入れ方、指先の意識
「さぷりキッズ1」より

ピアノを弾きましょう

体の準備ができたら実際にピアノを弾きます。

3の指で弾いてみましょう

3/4拍子で26曲を3の指だけで弾きます。

音を弾くときに「どお、れえ」というように母音を歌うことが特徴です。

母音の「お」の部分で離鍵をします。

鍵盤の弾く位置を覚え、腕をあげる高さを拍子によって変え、拍子感を覚えます。

2の指で弾いてみましょう

4/4拍子で13曲を2の指だけで弾きます。

さぷりキッズ②

2巻では実際に全ての指を使って弾けるようになります。

以下に目次とそれに照らし合わせた内容をあげます。

  • 2と3の指で弾いてみましょう・・・レガートにならないように1音1音、腕を動かして12曲弾きます。
  • フォルテとピアノで弾いてみましょう・・・打鍵のスピードの違いを感じるように6曲弾きます。
  • 4の指で弾いてみましょう・・・12曲を4の指のみで弾きます。
  • 2、3、4の指で弾いてみましょう・・・10曲。
  • 黒鍵と白鍵で弾いてみましょう・・・鍵盤の弾く位置を考えて6曲
  • レガートで弾いてみよう・・・第一関節、ひじ、眉毛を意識して6曲
  • ト音記号のところを両手で弾いてみましょう・・・右手から左手、左手から右手に変わるときに音が切れないように10曲。
  • 同じ音をレガートで弾いてみましょう・・・鍵盤を完全に上げない所で止める練習をしてから同じ音のレガートを練習する曲を11曲。
  • 1の指で弾いてみましょう・・・ここで初めて1の指で弾きます。鉛筆を使って1の指の動かし方を学び、14曲弾きます。
  • 5の指で弾いてみましょう・・・3、4の指を同時に弾くことで5の指の第三関節を支えて弾くことからはじめます。7曲。
  • 1と5の指で弾いてみましょう・・・レガートではなくフォームを崩さずに腕で弾く曲を8曲弾きます。
  • 1と5の指で同じ音をレガートで弾いてみましょう・・・手首や腕を使って2曲。
  • 全部の指で弾いてみよう・・・1と5の指の使い方に気をつけて拍子を感じて弾く。慣れてきたら自分でフォルテとピアノを書いて弾いてみる5曲。
  • 両手で一緒に弾いてみましょう・・・腕を動かして3曲。
  • 2つの音(重音)を弾いてみましょう・・・手のひらの筋力を意識して3曲。
  • 色々弾いてみましょう・・・これまでの復習で11曲。八分音符と6/8拍子が新しく登場する。

以上、内容を詳しくみてきました。

テキスト概要

  • 「ピアノを弾くからだシリーズ 黒河好子のPianoサプリ♪ さぷりキッズ」①②
  • 著者:黒河好子
  • 2012年出版
  • ヤマハミュージックメディア出版
  • 全2巻、導入解説本あり。同著者の「ピアノを弾くからだ 指のトレーニング編」が参考として出てきます。

 楽しいピアノライフを!

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執筆者

プロフィールイラスト
Kinako

ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。

中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。

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