これからピアノを始めようと思う方に、大人のために書かれたピアノの教本をご紹介します。
大人のために書かれたピアノの教本はたくさんあります。
楽譜屋さんに行けば「大人のピアノコーナー」が設けられているほど。
まず自分でやってみようと思い楽譜屋さんに来たものの、何が自分にぴったりなのか、どれがいいのか、わからない。。。
そんな方も少なくないと思います。
今回は「年長者のためのピアノ入門」を紐解いて行きます。
「年長者のためのピアノ入門」1・2 ジェームス・バスティン著
ピアノレスナーでは言わずと知れたバスティン先生が大人の入門者のために書いた本です。
前回の投稿でご紹介した橋本晃一著「おとなのためのピアノ教本」で参考にした教本として一冊めに挙げられているものです。
今や、世界中で一番使われいてる教本といっても過言ではないほどスタンダードになったメソッドを作り上げた著者が、大人のビギナーのために書いた教本です。
バスティンについてはこちらをご覧ください。
ポイント1.なんといってもバスティンメソッド!内容盛りだくさん!
バスティンメソッドの特徴といえば、音符の動きによる譜読み、コード、全調メソッド、たくさんの曲をこなすこと。
ただ音符と鍵盤を覚えて、指が動くようになるというものではなく、楽理や譜読みのテクニック、伴奏づけも同時に身につけていく盛りだくさんの内容です。
それをおとなの方向けに簡潔に書かれています。
こちらの教本の「はじめに」を読むと、「根本的な鍵盤の基礎を通して、一歩一歩生徒を導きます。」と書かれています。
独習目的に書かれたものではなく、レッスンに通いながら学ぶことを前提に書かれています。
確かに、ピアノ講師やバスティンメソッドでは当たり前だけど、音楽専門用語でもない言葉(「5指の位置」や音符の数え方、「グループ1の調」など)がこの教本だけでは捉えずらいところがあります。
どうしても独学で使いたい、という場合は、質問できる人が近くにいると良いかもしれません。
楽譜の読み方
まずユニット1では五線の楽譜は出てきません。
CDE・・の英語音名と音符の上下のみで、音符の上下と、音や鍵盤の上下を把握します。このことが楽譜読みながら弾くということに重要な下地になります。
音符はフラッシュカードを使って覚えていくことを進めています。
数こなし式
バスティンメソッドの特徴のひとつ「たくさんの曲を弾く」ということからも想像できるように、多くの併用教材があります。
巻頭に紹介されている教材は以下の5つ。
- 「年長入門者のミュージシャンシップ」
- 「各曲テーマによるピアノ曲集」
- 「宗教名曲集」
- 「世界の名曲のテーマから」
- 「ポップ ロック ブルースブック」
ラクにこなせる曲をたくさん弾くことで、楽譜を読む力をつけていく。公文式のようです。
内容としては、「ピアノアドヴェンチャー」と似ているところがありますが、こちらの教本の方レッスンを前提としているためか、簡潔にシンプルに書かれているという印象です。
ポイント2.コードを弾けるようになる
ユニット1でまだ楽譜が出てこない段階から、コード演奏が出てきます。
コードを早くから取り入れることで、充実した響の曲を弾くことができます。
また、この教材では「ドレミファソラシド」という音の名前は使わず、「CDEFGCD」という英語の音名を使用します。
これに慣れると、コードにも抵抗なく進んでいけると思います。
コードがわかるようになると、ポピュラーの曲を弾く時にとても便利です。
ポイント3.ユニットにごとに習得することが決められていてわかりやすい
アメリカで誕生した教本ですが、日本の教材と違いを感じるのは、内容がユニットに分かれていること。
日本のピアノ教材は、曲が中心に進み、学習内容によるユニットや章に分かれていないことが多いのです。
アメリカの教材の多くは、教本がいくつかのユニットに分かれていて、 達成感や目標を短期的に持ちやすいと思います。
一冊終わることを目的にしていると、数年単位の目標になってしまいますが、ユニットごとに短い目標と達成感は数ヶ月単位で感じることができます。
これは学習を進めていく時にとても重要なことです。
長い道のりをいかに達成感と目標を継続して持っていくか。
それには、ただ内容を羅列するだけではなく、なんらかの工夫が必要です。
アメリカの教材はその点がわかりやすく工夫されていると感じます。
この教本の足りないところ
・英訳の日本語が少しわかりずらいことも。。。
こんな人にぴったり
・ただ弾けるだけではなく、基礎的な理論もしっかり漏れなく身に付けたいという方
・黒い鍵盤も抵抗なく弾きたい!という方
・長期的にしっかり勉強したい、という方
・手先の器用さに自信がある方
教本概要
- 「年長者のためのピアノ入門」ジェームス・バスティン著 浅見英夫訳
- 1977年出版(日本語版は1983年)
- 全2巻(レベル1、レベル2)
- 併用曲集 5冊
- 第1巻・・・95ページ
第2巻・・・95ページ - 構成
1巻が10のユニットに分かれている。2巻で全10ユニット。
1つのユニットが7〜10ページ - 各ユニットの内容
習得する項目のリスト、絵や図と言葉による解説、練習方法、課題曲、復習ワーク - 曲数
第1巻・・・115曲
第2巻・・・105曲 - レベル
入門からブルクミュラー程度まで。
この教本の仕上げともいうべき巻末のレパートリーには有名なクラシックの曲が収録されています。
♪ロベルト・シューマン作曲「小さな歌」(子供のためのアルバムop68より)
♪ブルクミュラー作曲「アラベスク」
楽しいピアノライフを!
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。