「テキストは正しく進めているのに、音符を読む力がなかなかテキストの進度についてこない」
そんな生徒さんはいませんか?
新しい曲になると、
「これは何の音?」
と、一つひとつ確認しながら読む。
そんな状況を見ると、
「すでに前の曲で学んでいる音のはずなのになぜ?」
「前の曲では弾けたはずなのになぜ読めないの?」
と心配になってしまいます。
ピアノを習っているのだから、テキストが進めば自然に音符も読めるようになるはず……と思っていたのに、なかなかそうならない。
進め方が悪いのかな?テキストが合っていないのかな?
と不安になるかもしれません。
でも、ピアノを弾く力と、音符を読む力は、実は別の力です。
両方が同じペースで育っていかなくても、不思議なことではありません。
ピアノを弾く力と、音符を読む力は別のもの
ピアノを弾くためには、さまざまな力が必要です。
たとえば、
- 手指を自由に動かす力
- 鍵盤の位置を把握する力
- 音を聴き取る力
- リズムを感じる力
- 音楽を記憶する力
- 音楽を奏でたいと思う力
などです。
一方、楽譜を読むためには、
- 五線上の音符の位置を捉える力
- 目で見た情報を正確に認識する力
- 音符と音名を結びつける力
- 音符を順番に目で追っていく力
などが必要になります。
つまり、ピアノを弾くことと楽譜を読むことには、共通する部分がありながらも、それぞれ異なる力が必要です。
だから、
「ピアノはよく弾けるのに、音符を読むのは苦手」
ということがあっても、決しておかしいことではありません。
むしろ、それぞれの力を別々に育てていく必要があると考えたほうが、子どもの成長に合わせた指導がしやすくなります。
「教えた」「覚えた」からといって、すぐに「読める」わけではない
多くのピアノ教本は、新しい音を覚えて、その音符が出てくる曲を数曲弾きます。
例えば、「これはドだよ」「これはレだよ」
と、一つひとつ音名を覚えていきます。
そしてその音を使った新しい曲を数曲弾きます。
これで、読めるようになり、弾けるようになるというのが大まかな流れです。
でも、音符の名前を覚えることと、楽譜をスムーズに読むことは同じではありません。
たとえば、ひらがなの「あいうえお」を覚えたからといって、すぐに文章をスラスラ読めるようになるわけではありません。
「これは「あ」」「これは「し」」と文字を一つずつ認識する段階から、文字をつなげて言葉として読み、文章として意味を理解するまでには、練習と経験が必要です。
音符も同じです。
「この音符はド」と知っていることと、
楽譜の中に出てきた音符を見て、すぐに音名を判断できること
の間には、いくつもの段階があります。
だから、
「教えたのに、まだ読めない」
と焦る必要はありません。
「知っている」から「すぐに読める」へ進むための練習が、もう一段階必要なのかもしれません。
子どもにとって、楽譜は大人が思うほど簡単なものではありません
大人にとっては、五線と音符は整理された情報に見えます。
でも、楽譜を学び始めたばかりの子どもにとっては、
「五本の線のどこに音符があるのか」
「線の上なのか、線と線の間なのか」
「前の音符より高いのか低いのか」
といった情報を目で捉え、それを音の名前と結びつけること自体が、一つの学習です。
子どもの発達には個人差があります。
手指を動かすこと、音を聴くこと、目で位置関係を捉えることなど、さまざまな力が同じ速度で発達するとは限りません。
そのため、小さいうちは、
「どうしてこの子はピアノを弾けるのに、音符はなかなか読めないんだろう?」
ということがあっても、焦らずにその子のペースを見ていくことが大切です。
テキストを繰り返すだけでは、読譜力が十分に育たないことも
では、音符を読めるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
一つの方法は、テキストの練習とは別に、音符を読むための練習を取り入れることです。
テキストでは、今練習している曲を弾くことが中心になります。
そのため、同じ曲を何度も練習しているうちに、
「楽譜を読んで弾く」というより、
「覚えて弾く」
ことができるようになる場合もあります。
もちろん、それもピアノを弾くための大切な力です。
でも、初めて見る楽譜を読む力を育てるには、初めて見る音符を自分で読み取る経験も必要です。
だから、
テキストの曲を練習する時間
+
音符そのものを読む時間
と分けて考えてみるとよいでしょう。
音符そのものを読む時間を作る
これには2つの方法があります。
1つ目は、ピアノを弾きながら行い、2つ目はピアノから離れておこないます。
ピアノを弾きながら行う方法は、「これは音符を読む練習だ」と割り切って、音符を読むことのみに集中する初見練習の方法です。
この場合は今弾くことができるレベルではなく、読むことができるレベルに合わせます。
テキストとしては2つ3つ戻る場合がほとんどです。
2つ目は、ピアノから離れて、ワークやプリント、カードを使って音符学習に取り組みます。
苦手な部分は、その子のペースで補っていく
音符を読むのが苦手な生徒さんには、まず今どこでつまずいているのかを見てあげることが大切です。
音符の名前を覚えるところでつまずいているのか。
五線上の位置を捉えることが難しいのか。
音符はわかるけれど、読むスピードが遅いのか。
一人ひとり違います。
だからこそ、テキストの進度だけに合わせるのではなく、その子に足りない部分を個別に補っていくことが必要になります。
プリント学習などでも、一人ひとりの理解度に合わせて、できるところは先に進み、苦手なところは繰り返し練習します。
音符の学習も同じです。
「みんながここまで読めるから、この子も読めるようにしなければ」と考えるのではなく、
その子が今できるところから、少しずつ。
それでいいのです。
「読む」だけでなく、「書く」ことも大切
音符を読む力を育てるためには、音符を見て答えるだけでなく、自分で音符を書く経験も役立ちます。
「ドはどこに書く?」
「レはドより上?下?」
と自分で考えながら書くことで、五線上の位置と音の名前を結びつけることができます。
見る。
読む。
書く。
また読む。
こうした経験を繰り返していくことで、少しずつ音符が「見慣れたもの」になっていきます。
「教えた・覚えた・読める」は同じではありません
音符の指導をしていると、
「この音はドだよ」
と教えた。
↓
子どもも「ド」と答えられた。
↓
なのに、楽譜になると読めない。
ということがあります。
でも、それは失敗ではありません。
「教えた」
「覚えた」
「読める」
は、それぞれ違う段階だからです。
教えたことが、すぐに実際の楽譜の中で使えるようになるとは限りません。
だからこそ、焦らずに、
知る → 見つける → 読む → 書く → 繰り返す
という経験を積み重ねていきましょう。
音符を読む練習を、少しずつ
ピアノを弾く力と、音符を読む力。
どちらもピアノを楽しむために大切な力ですが、同じように育っていくとは限りません。
「テキストは順調に進んでいるのに、音符を読む力が追いついていない」
そんなときは、無理にテキストの進度に合わせようとするのではなく、その子に必要な音符練習を別に取り入れてみるのがおすすめです。
一度にたくさんやる必要はありません。
レッスンの数分間。
家庭で1枚。
できるところから少しずつ。
音符を見る経験を重ねていきましょう。
「教えたから、もう読めるはず」ではなく、「読めるようになるまで、もう少し経験が必要なんだ」と考える。
それだけでも、子どもへの声かけや指導の仕方が変わってくるかもしれません。
音符を読む練習に「おんぷプリント」
「おんぷプリント」は、音符を読む・書く練習を、レッスンや家庭学習に取り入れやすいようにまとめた学習プリントです。
テキストとは別に、その子の今の読譜力に合わせて、必要な練習を少しずつ追加したいときに使えます。
39種類・全78ページ。
レッスンのちょっとした時間や、おうちでの音符練習に。
「音符を読む力を、少しずつ育てたい」
そんなときに、ぜひご活用ください。
執筆者

ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。


