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最近ピアノのモチベーションが下がってるな、やる気が出ないようだなと思った時にできることを紹介します!「モチベーションをまなぶ12の理論」を参考に紐解いていきます。

モチベーション

好きなものを再確認する

自分から進んでピアノに満足を求めるようなモチベーションは個人の「興味」から起こる心理的な現象です。興味は、一人一人違うというところに行き着きます。

まずはじめにその個人的な興味からくる自分の「好き」を再確認しましょう。

  • 今レッスンで取り組んでいる曲の中ではどの曲が好きですか?
  • その曲のどんなところが好きですか?
  • 明るく楽しい曲を弾くのが好きですか?
  • ロマンチックな曲を弾くのが好きですか?
  • かっこいい曲が好きですか?
  • 精巧に作られた曲に魅力を感じますか?
  • 複雑な響きが好きですか?
  • シンプルな曲が好きでしょうか?

普段のピアノレッスンではテキスト中心の「やるべき」が先行してしまいがちです。

自分の「好き」を置き去りにしていないでしょうか?好きな気持ちや興味に今一度向き合うことをおすすめします。

「なぜかわからないけど、なんか好き。興味がある。」という気持ちがモチベーションの原点です。

音楽の場へ足を運ぼう

習い事としてレッスンに通っていると教室と自宅のピアノ前だけでの音楽になりがちです。

意識的に音楽を聴いたり、興味が刺激される音楽の場所へ足を運びましょう。

音楽に出会える場所

  • 楽器屋さん
  • 楽譜屋さん
  • コンサート
  • CDショップ

youtubeやSNSで新しい音楽に出会うのも1つの方法です。

もともとある興味は新しい刺激や知識によって強まります。

人間には新しい刺激や知らない情報を求める傾向があります。好奇心を刺激される場所へ足を運びましょう。

親や先生が効果的な声かけをする

心理学の実験で、難しいパズルをする時に成功に焦点を当てた伝え方(接近動機付けフレーミング)をすると、失敗に焦点を当てた時よりもパズルを楽しかったといい、より長い時間自発的に遊んだと言います。成功に焦点を当てた伝え方とは、「もしあなたが他の人より上手くできたら、あなたはパズルを解く能力が他の人より高いことがわかる」という言い方です。反対に失敗に焦点を当てた伝え方とは、「もしあなたが他の人より上手くできなかったら、あなたはパズルを解く能力が他の人より低いことがわかる」という言い方です。ピアノに向かう子どもや生徒さんに対しても、この接近動機づけフレーミングを使うことが大切です。

モチベーションが上がる!ピアノでの成功に焦点を当てた伝え方

  • この曲が弾けたら、かっこいいよね。
  • この部分が弾けたら、気持ちがよさそう。
  • この練習ができたら、急成長できる!
  • このテクニックを身につけたら、他のこんな曲も弾けるね。
  • この教本を終えることができたら、〇〇曲も弾けたってことだね。
  • 発表会でうまくいったら、みんなすごく感動する!

モチベーションを下げる!失敗に焦点を当てた伝え方

また反対に絶対に避けたいモチベーションを下げる言い方は次のようなものです。普段何気なく口にしてしまう言葉が多いのではないでしょうか。

  • この曲が弾けなかったら、カッコ悪いよ。
  • 練習しないと、どんどん下手になるよ。
  • この教本が終わらないと、次に進めない。
  • このテクニックが身につかないと、弾ける曲は限られている。
  • 発表会で失敗したら、悲しいし恥ずかしい。

褒めてのばすか?叱ってのばすか?

褒めてのばすのか、叱ってのばすのかどちらがいいのかと考えたことがある人は多いと思います。

褒めるというのは、うまくいった時にポジティブな刺激を与えることなので「接近動機づけ」と言われます。接近動機付けとはポジティブな刺激に近づこうとすることです。例えば、コアラがおいしいユーカリに近づこうとすることで、生き物全てが持っている動機づけ(モチベーション)です。

反対に叱るというのは、失敗した時にネガティブな刺激を与えることで「回避動機づけ」です。回避動機づけも生き物すべてが持っているモチベーションで、外敵や危険なものから逃れようとすることです。

それではピアノの練習や上達にはどちらが有効なのでしょうか?

「怒られたくない!」は強い気持ちを生む。

ポジティブな刺激を求める接近動機付け(褒められたい)よりも、ネガティブな刺激を避ける(叱られたくない)方が、心理的に強く働くことがわかっています。ですので、「叱られたくない」というのをモチベーションに行動することは即効性があります。子育て中の方や、ピアノの先生でしたら思い当たるところがあるのではないでしょうか。しかし、これには副作用があります。

注意!「怒られたくない!」はパフォーマンスを下げる。

副作用とは「不安」です。「叱られるかもしれない」は不安を生みます。不安は長期的な認知能力を低下させます。つまり不安はパフォーマンスを下げます。

回避動機付けは不安をあおり、成績を低下させる作用があります。叱ることで効果を感じられたとしても、その後のパフォーマンスの低下があり得るので、注意が必要です。

理想を見つける

人には「理想」の自分と「義務」としての自分があると言います。理想の「こうありたい」という像は、ポジティブな刺激に惹かれる接近動機付けです。義務の「こうあらねばならない」という思いは、ネガティブな刺激を避けたいという回避動機付けです。義務よりも、理想の方が、長期的で有効だということがわかります。

理想の「ピアノ」を持つようにしましょう。

  • たくさん音楽を聴く
  • 理想のピアニストを探す
  • 理想のピアノ系youtuberを探す
  • ピアノ系の雑誌を見て情報を集める
  • 教室の先輩の演奏を聴く

無意識に訴える!

人間の複雑な精神活動の大部分が、自動的に無意識で働くことが昨今明らかにされてきました。モチベーションについても例外ではありません。

親や先生、友達の目標は感染する

人は他者の行動からその背後にある意図や目標を自動的に見つけだし、それに応じて自分の反応を自動的に調整していることがわかっています。他者の目標が自らの行動に自動的な影響を及ぼすこと=目標感染と言います。

集団や商品からも目標感染が起きます。

  • 親自身が目標を高く持つ。
  • 高い目標を持つ環境(教室)を選ぶ。
  • 楽器を変える。

楽器を変えることや教室を変えることはなかなか難しいことですが、モチベーションへの影響は明らかです。

ポジティブな言葉を目に入るところにおく

心理学の実験で「達成」や「成功」などの単語に触れるだけで無意識の動機づけが高められることもわかってきました。教室や職場に飾られている額に入った標語なども、ただの飾りではなく無意識に働きかけていたのかもしれません。ピアノの近くや目に入るところにこういった言葉を飾るのも無意識への効果があるでしょう。

親や先生はモチベーションを支持する言動をする

心理学の実験で、目標意識の高いクラスを形成している教師の発言や行動の特徴に注目しました。その結果、次のようなことがわかりました。

分析の結果、教師は子どもに対して、課題への挑戦を奨励し、失敗を肯定的に意味づけるなど学習者の動機づけを支え、うながすような言葉がけを多く行なっていることが見出された。

「モチベーションを学ぶ12の理論」p.209

目標意識の高いクラスの先生に見られる「動機づけを支え促すような言葉がけ」とは具体的は次のような感じです。

  • 自律的な学習を支える
  • 理解に対して、子どもに責任を持たせる
  • 学習の過程に焦点を当てて、挑戦させる
  • 間違いを意味のあるものとみなす。
  • 粘り強さを支持する。
  • ユーモアを使って不安を減らそうとする。

学校の教師と親とは立場が違いますが、参考にできる部分があると思います。これをピアノの練習の具体的な場面に当てはめてみます。

  • 子ども自ら行ったピアノ練習や取り組みを後押しする。
  • 子どもなりの曲の理解を尊重する。
  • 子どもが演奏したもの対して否定せずに「あなたの演奏」として責任を持たせる。
  • 練習の過程に焦点を当てる。
  • 失敗したことや間違えたことを否定せずに、意味のあることだとフォローをする。

避けたい声かけ

反対に目標意識が低いクラスの教師の態度は次のようなものでした。

  • 完全にやりとげることや正確さを強調する
  • サボりなど不適切な行動に焦点を当てる
  • 間違いを、学習を邪魔するものとして捉える
  • 達成を低くみなす
  • 表面的な褒め言葉
  • おどしや皮肉
  • 比較を促すような競争を強調する

これらの言動は注意深く排除する必要があります。

親の態度で変わる

接近・回避の動機付けを持つかは個人差があります。

40〜50%が遺伝で説明されると言います。逆にいうと、50〜60%は環境によって決まります。

接近動機付けを育む環境

年齢に応じて独立性を促す、子どもが有能で自律的だと感じられるような環境を与える

つまり、年齢に見合った形で子どもに任せること、子どもに決定権を持たせることです。

このことについては、こちらのページでも詳しく書いています。

回避動機付けが高くなる

親が積極的に罰を与える。愛情ある関係を子供と結べていない。

なぜ無気力になるか?

それではなぜ、モチベーションは低下して無気力な状態になるのでしょうか。

同じ不快な刺激にさらされながらも、その刺激に対してコントロール不可能な状況に置かれると人は無気力になります。

コントロールできない原因は何か?

  • 自分の能力に原因があるのか、外部に原因があるのか(内的ー外的)
  • いつまでも続くのか、一時的なものなのか(安定ー不安定)
  • コントロールできないことが他の多くのものにも関連しているのかー部分的なものなのか(全体的ー特殊的)

内定ー安定的ー全体的な場合、最も無気力になる。

つまりコントロールできない時に、

自分の能力に原因があり、いつまでも続くと思われ、他の多くのことも同じ状況になる

と考えている時が最も無気力を生みます。

自分の力で対象をコントロールしようと思えることが無気力にならないためには重要です。

報酬をもらうと「自分のことは自分でやっている」という気持ちが削がれてしまい、学習性無気力と同じような状況に陥ってしまうこともあります。

ピアノの場合のコントロールできない対象とはなにか?

それではピアノに取り組んでいる子どもが「コントロールできない」対象とはなんでしょうか。

具体的な場面と、その対処法をまとめました。

コントロールできない対象不快に感じること対処法
演奏の出来具「うまくできた」と感じられない曲が難しすぎる。実力にあった曲を選ぶ。
好きな曲が弾けない音楽の好みと向き合う
順位頑張ったのに結果がでない結果ではなく過程を評価する
レッスンペース練習がつらい本人が辛くない練習量を話し合う。先生にも相談する。
レッスンペース退屈に感じる高いレベルに挑戦する。先生に相談する。

対処法は、親や先生が勝手に決めるのではなく、子どもの意見によく耳を傾け尊重することで、自分が主役であり、自分でコントロールできるという自律につながります。

自律性はモチベーションを長期的に持ち続けることの大事な要素です。

参考にした本

さらに詳しく知りたい方はこちらの本をご覧ください。12人の学者による「やる気の心理学」の解説書です。入門としてピッタリです。興味が湧いた分野でさらに学びたい場合の参考図書も載っています。

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執筆者

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Kinako

ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。

中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。

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