今回は高田美佐子著「はじめてのフォルマシオン・ミュジカル 音楽力を育てる新しいソルフェージュ」をご紹介します。
フォルマシオン・ミュジカルって何?
タイトルにもあるフォルマシオン・ミュジカル(formation musicale)とはフランスの音楽教育システムの名前です。
直訳すると「音楽のトレーニング」という意味です。
音楽のトレーニングというと、「ソルフェージュ」と呼ばれるものがありますが、何が違うのでしょうか?
従来のソルフェージュでは、「楽典」「聴音」「視唱」それぞれ個別に問題集をやり、聴音用の課題を解き、視唱用の課題を歌う、というやり方で取り組まれてきました。
一方「フォルマシオン・ミュジカル」では、実際の曲を使ってそれらのことを学んでいきます。
どちらも音楽を聴く力、演奏する力を養うことを目的としていることは同じですが、アプローチの方法が違います。
「はじめてのフォルマシオン・ミュジカル」
こちらの本は、「フォルマシオン・ミュジカル」とフランスで出会った著者の高田美佐子さんによって2016年に出版されました。
ピアノや音楽教育に携わる先生に「フォルマシオン・ミュジカル」の楽しさと意義を紹介することを目的に書かれています。
対象は?
この本は「はじめに」には、ソルフェージュやピアノのレッスンをしている先生方へ向けてと書かれています。
先生だけでなく、楽典の知識がある程度ある方でしたら役に立つことが多くあります。
この本が役に立つ人
- 音楽作品と結びついたソルフェージュのレッスンをしたいピアノの先生
- 「フォルマシオン・ミュジカル」とは何か知りたいピアノの先生
- ソルフェージュは何のために学ぶのかわからないと感じている方
- 音楽の仕組みについてどのように学んだらいいかわからない方
著者:高田美佐子
国立音楽大学のリトミック専攻を卒業し、ダルクローズ・リトミック、ソルフェージュの専門家です。
フォルマシオン・ミュジカルの他に楽典のテキストも出版されています。
次に内容を詳しく見ていきます。
こちらのテキストでは2つのパートに別れています。
PART1「楽しいフォルマシオン・ミュジカル レッスン例」
レベル順に次の8つの曲のレッスン例を紹介しています。
- ちょうちょう
- のばらに寄す
- アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳より「ミュゼット」
- エリーゼのために
- 舟歌
- インベンション8番
- 動物の謝肉祭より「かめ」
- ミクロコスモスより第58番「オリエンタル風」
1つの曲に関して、読譜、リズム、聴音、 理論、音楽史、即興、歌唱という7つの要素でアプローチします。
それぞれのアプローチの方法は次の通りです。
音楽史
- 曲を聴き、作曲家やタイトル、曲の背景を話す。
- 自筆譜を見て気づいたことを話し合う
- 作曲家の肖像画を見る、描く
リズム
- メロディのリズムを叩く
- リズムパターンがいくつ出てきたか数える
- メロディに出てくるリズムパターンをあらかじめ叩く
- リズムをノートに書く
- 指揮をしながら「タン」「タタタタ」など言葉で読む
- 曲に出てくるリズムを使って自分でリズム譜を作る
聴音
- メロディのリズムパターン聴き取り、色分けする
- オーケストラの曲を聴き、何の楽器が演奏しているか聴き分ける
理論
- 拍子記号を見る
- 指揮をしながら曲を聴く
- 音部記号(ト音記号、ヘ音記号)に注目する
- 2度、3度の音を見つけ、音程の持つ特徴を感じる
- 曲の中で1箇所しか出てこないリズムパターンを見つける
- 使われている音を並べて音階の持つ特徴を感じる
- 「ミュゼット」から「ドローン」を感じる
- ユニゾンを見つける
- 何調の曲か考え、その音階をノートに書いて歌い、ピアノで弾く
- 転調している部分が何調か考える
- ⅠとⅤの和音に合わせて身体を動かす
- 同じ部分がどこに出てくるか探して曲の構成に目を向ける
- ⅠとⅤを見つける
- 強弱記号をどのように弾いたらいいか考える
- 同じ音型を探す
- ミラーの音型を探す
- バッハ「インベンション」の左手部分が空白のものを埋めて完成させる
即興
- 曲で使った音階やリズムパターンを使って、自由にメロディを即興する
- ドローンの左手に、指定された5音で作るメロディを右手でのせて即興する
- リズムカノンを作る
歌唱
- メロディを歌う
- メロディから抜き出した音だけ歌う
- 音階を歌い「ハイ!」の合図で方向を変えたり、リズムを変えたりする
読譜
- リズムのパターンを見つけて、音符を1つずつ追うのではなく、ひとつの型として読み取る
- 指揮をしながらクレ読み(音程をつけずに音の名前を言う)をする
PART2「ソルフェージュ・エクササイズ集」
ここでは、読譜、リズム、聴音、 理論、音楽史、即興、歌唱の7つの要素のエクササイズを、入門、初級、中級と言う3つのレベルに分けて紹介しています。
実際のレッスンで使える例が豊富に紹介されています。
フォルマシオン・ミュジカルの取り組みがわかる実践ばかりです。
- 読譜
- 入門編:「となりの音」「離れた音」を見つける、音のパターンを読む
- 初級編:クレ読みをする
- 中級編:曲のクレ読み、大譜表のクレ読み
- リズム
- 入門編:ビートと拍を感じる
- 初級編:バイナリービート(二分割)、ターナリービート(三分割)
- 中級編:リズムを表現する
- 聴音
- 入門編:メロディ、リズム、和音、ニュアンスを聴き取る
- 初級編:入門編のレベルアップ
- 中級編:初級編のレベルアップ
- 理論
- 入門編:音の名前に親しみ、音程の基礎を学ぶ
- 初級編:調性感を養い、音階の基礎を学ぶ
- 中級編:和音、終止形の基礎を学ぶ
- 音楽史
- 入門編:作曲家の似顔絵を描く
- 初級編:楽器に興味を持つ
- 中級編:音楽年表を作る
- 即興
- 入門編:リズムパターンにのって即興
- 初級編:シンプルなメロディを作る
- 中級編:ロンド形式、音程、教会旋法を使った即興
- 歌唱
- 入門編:読譜のエクササイズを使う
- 初級編:読譜のエクササイズを使う
- 中級編:グループでのレッスン例
以上、「はじめてのフォルマシオン・ミュジカル」を紹介しました。
楽しいピアノライフを!
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。