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今回はハノンピアノ教本を紐解いていきます。

日本では多くの「ハノン」が出版され、ピアノを弾く人が一度は耳にする名前だと思います。

この「ハノン」について、前編では内容を詳しく見ていきます。

なお今回は音楽之友社出版の「ハノン・ピアノ教本 解説付き」を参考にしています。

ハノンてどんなテキスト?

ハノンって何?

「ハノン」と言われるテキストはテクニックに重点をおいたピアノテキストです。

日本では「ハノン・ピアノ教本」というタイトルで出版されていますが、正式タイトルは「60の練習曲によるピアノ・ヴィルトゥオーゾ le pianiste virtuose en 60 exercices」です。

ヴィルトゥオーゾとは、「芸術の技術の優れた人」を意味します。

卓越した技術で名人の域に達している演奏者をヴィルトゥオーゾと言います。

タイトルを意訳すると「60の曲で達人ピアニストを目指す」といったところでしょうか。

ハノンというのはこのテキストの著者の名前です。

一般的に日本でハノンというと、著者本人のことではなくこの練習曲集のことを指します。

1873年にパリで出版されたのち、数カ国で出版されました。

原題では、ピアノの練習曲につけられる練習曲という意味の「Etude(エチュード)」や「Studie」ではなくエクササイズ(exercices)となっていることが、このテキストをよく表しています。

著者ハノンはどんな人?

小鍛治邦隆の解説「『ハノン』について」によると、

著者のシャルル・ルイ・ハノンは1819年にフランスで生まれた作曲家で、音楽教育に関する著述家です。

歌唱・ピアノの個人指導をしながら作品を出版しました。

その作品は教育的な目的をもったものや、アマチュアのための宗教的・道徳的な主題を扱ったものだといいます。

ピアノ教育におけるハノンの目的

ピアノ教育家としてのハノンは、次のことを目的にしています。

  • 右手も左手も同じように、全ての指を平均化すること
  • 鍵盤楽器における演奏上の問題を整理して、効率の良い練習方法を発見すること
  • これらの練習を独学で学ぶことを視野に入れること

「ハノン・ピアノ教本」とは?

次にこのテキストの特徴を小鍛治邦隆の解説「『ハノン』について」、とハノン自身による「まえがき」を参考にご紹介します。

キーワードをあげるとするなら次の6つです。

短期間・効率的・速さ・力強さ・均等・柔らかさ

特徴1:わかりやすくまとめられた練習方法

学習者の技術的な困難を、わかりやすく組織化された練習方法によって克服する、という特徴をそなえています。

「ハノン・ピアノ教本」音楽之友社 2006年 p.3「『ハノン』について」

テクニックの難しい部分が、わかりやすくまとめられているということが1つの特徴です。

まとめられた練習方法に取り組むことで、そのテクニックを克服しようというものです。

特徴2:独学・独習も

独習によって学ぶことすら視野に含まれています。

「ハノン・ピアノ教本」音楽之友社 2006年 p.3「『ハノン』について」

ピアニストが自ら学ぶことを視野に入れて作られているとも言えます。

目標は?

私たちは(中略)何年も研究してきました。その時に目標としたのは、ピアニストの修行に必要な過程を、短期間にマスターさせるような特別練習を、一冊にまとめることにありました。

「ハノン・ピアノ教本」音楽之友社 2006年 p.2「はじめに」

すぐれた演奏に欠くことのできない技巧として、各指の俊敏さ、独立性、力強さ、完全な均等性、手首の柔軟性が目標となっています。

「ハノン・ピアノ教本」音楽之友社 2006年 p.2「はじめに」

速く強く均等に動かせる指と、柔らかい手首を短期間で効率的に身につけることが目的です。

対象は?

あらゆるピアノ学習者のために書かれました。1年ほどピアノを習った人たちが使っても構わないし、程度の高い人なら、短期間に習熟してしまうことでしょう。

「ハノン・ピアノ教本」音楽之友社 2006年 p.2「はじめに」

構成

ハノンは3部構成でできています。

各部のタイトルは実際にハノン自身が書いたタイトルの日本語訳です。

第1部 指が素早く、力強く、1本1本独立して均等に動くようになるための準備練習

1〜20番。

いわゆる「ハノン」と聞くと、この部分の練習を想像する人が多いのではないでしょうか。

同じ音型を繰り返しながら、上行下行する曲があらゆるパターンで20曲続きます。

5本の指、左右の手を全て均等に力強くはやく動くような練習曲です。

「ハノン」とタイトルのつくものはたくさん編集され出版されています。

その多くがこの第一部を編纂したものです。

第2部 もっと難しいテクニックのための準備

21〜43番。

第2部はさらに2つの部分に分けることができます。

21〜31番

ここでは、第1部の音型の繰り返しを発展させたものです。

32〜43番

32番からはこれまでになかった親指をくぐらせるテクニックの練習が始まります。

そして39番の音階全調練習、40番半音階の練習、41番以降のアルペジオ練習へと繋がります。

音階とアルペジオの全調の練習は、本来ハノンが書いたものではなく、新訂版の編者アルフォンス・ショットによるものだと考えられています。

第3部 最高のテクニックを身につけるための練習

44〜60番

ここでの課題は、タイトルにあるように「最高のテクニック」を身につけることです。

内容は次の通りです。

  • 3つの反復音(3つの同じ音を違う指で素早く弾く)
  • 2音ずつくりかえす音符
  • トリル
  • 4つの反復音(4つの同じ音を違う指で素早く弾く)
  • 手首の練習(3度、6度和音の繰り返し)
  • 1-4、2-5指の間を広げる練習
  • 3度のレガート
  • 3度の音階をレガートに弾く練習
  • 短3度の半音階
  • オクターヴで音階を弾く練習
  • 3度の音階(全調)
  • オクターヴの音階(全調)
  • 3度の重音トリル
  • 三重トリル
  • 四重トリルの特別な指使い
  • 分散オクターブの音階(全調)
  • オクターヴの分散アルペッジョ(全調)
  • オクターヴの保持
  • 6度の四重トリル
  • トレモロ

大まかにまとめると、

同じ音を繰り替えす練習、3度・6度・オクターヴの練習、トリルの練習、音階の練習の4つの課題があります。

それぞれが掛け合わされている練習もあります。

最後の「トレモロ」はハノンの中で唯一曲らしい展開があります。

以上、ハノン・ピアノ教本を詳しく見てきました。

楽しいピアノライフを!

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