「誰でもできるピアノ即興演奏 インプロヴィゼーションの冒険」はどんな本?【前編】
今回はグレン・マック著の「誰でもできるピアノ即興演奏 インプロヴィゼーションの冒険」を紹介します。
ピアノ即興演奏のアイディア集のようなこちらのテキスト。
前編では内容を詳しく見ていき、後編でそのポイントをまとめます。
今回は前編です。

目次
「インプロヴィゼーションの冒険」グレン・マック著
こちらのテキストは1970年にアメリカで出版され、日本語版は1994年に出版されました。
訳者はアメリカのピアノ教本を多数翻訳出版しているピアニストの中村菊子さんです。
まずはじめに冒頭の「はしがき」に書かれていることをまとめます。
想定されているシチュエーション
はしがきによると、即興演奏が必要とされている場面として想定しているのは3つです。
- 教会で会衆が入ってくる時に賛美歌を即興演奏しているオルガニスト
- 明け方の2時にコーラスも入れて弾かなければならないジャズ・グループのピアニスト
- とても速い7拍子に合わせて“走ったり、転んだり”を踊るダンス・クラスの伴奏者
それぞれのニーズに合った即興演奏を行なうための基礎的内容になっています。
対象者と活用方法
- 音楽教室の生徒‥音楽について知り、音楽を作り、音楽を聴く助けとなる。すでに学んだ音楽をさらに理解するための架け橋となる。
- 初心者‥自分自身の音楽を作り、ピアノの音楽を探求し、他の生徒とデュエットを弾き、そして、セオリーの要素を学ぶことができる。
- 上級者‥自分の音楽の楽しみのために、また音楽の素材にいっそう親しむために、1人でこの本を勉強することができる。
- ダンスの伴奏者‥この本を通して自分が即興しなければならないリズム、曲の性格、ムードの表現に役立つ素材を見出すことができる。
- 幼稚園や小学校の先生‥子供達の活動に音楽を使うときの助けとなるたくさんのアイディアを見つけることができる。
即興演奏で気をつけること
「はしがき」に続くページの「即興演奏で気をつけること」であげられている事をまとめます。
気をつけることは以下の5つです。
- 常に耳で弾くこと。
- 作曲はしない(作曲と即興を混ぜこぜにしない)。
- 即興しているときは、止まったり、弾き直したり、同じものを繰り返したりせずに、常に先に進む。
- 即興演奏を“学ぼう”としない。自分の機知を信じる。
- 良いアイディアはメモをとる。
続く内容は7つのレッスンで構成されています。
- レッスン1で「最も簡単で可能な鍵盤と想像力の使い方」を学ぶ。
- レッスン2〜7で「新しいアイディア」を学ぶ。
色々な基本的アイディアを単独に、または組み合わせて使うことができます。
ここで学ぶ「それらのアイディアは、想像力を駆使し、勉強し、実践するあなたの出発点」となります。
次に各レッスンの内容を詳しく見ていきます。
レッスン1:白鍵の上の即興演奏
ここでは、簡単な5指の手のポジションで即興をします。
以下の4つの段階があります。
- 右手で白鍵で5本の指を動かさずに即興します。
- 両手で同じように「5指のポジション」で即興します。
- 右手は旋律、左手は伴奏をつけます。
- ポジションを曲の途中で移動します。
レッスン2:白鍵と黒鍵を使った即興演奏
ここからは、即興演奏をする上で土台となるアイディアを学びます。
例として書かれた即興演奏の曲を弾きそれぞれの要素を学びます。
各アイディアは以下の通りです。
音階を中心とした構成
- レッスン1で行った5本の指の即興に#や♭を入れて黒鍵を使った即興。
- ハ長調の全音半音の関係を見て、ほかの音から始まる長調を作り長音階を学びます。
- 旋法(モード)。
- 全音半音に収まらないものとして、黒鍵のみで弾く5音音階と、全音音階。
- 全音と半音を交互に使った8音階。
- 12の半音からなる半音音階。
- ブルー・ノートの音階。
音程を中心とした構成
- 長短を学びます。
- 2、5、7度の音程を使った即興。
- 3、6度の音程を使った即興。
和音を中心とした構成
- ある調性や旋法内の3度から作られた和音
- 調性にとらわれず、一種類(長三和音の基本形)だけを使う即興
- 4取れ構成された和音を使う即興
- クラスター
- 決まったパターンを使う(ブルースやブギウギ)
その他の構成方法
- 模倣
- 広げられた5指の型
- 音域を広げたオスティナート
- 下行音型
- 音階のすべての音を協和音として使う。
- 持続される旋律
- モノフォニー・ポリフォニー・平行音程
- 音域や和音の配置
- 協和音と不協和音
- 既存の曲のアイディアを借りる
レッスン3:積み木のように作りましょう
ここでは、レッスン2で学んだアイディアの組み合わせ方を学びます。
- モチーフ
- フレーズ
- 楽節(2つのフレーズが合わさって)
レッスン4:旋律の和声付け
ここでは、右手で弾く旋律に合った、左手の伴奏和音の付け方を学びます。
レッスン5:ダンス・リズムの即興演奏
ここでは、決まったリズムのパターンを学びます。
- ワルツ
- ラテン・アメリカとスペインの踊り(コンガ、ビギン、タンゴ)
レッスン6:リズム運動とダンスのための即興演奏
伴奏の例として以下の7つの例の楽譜をあげています。
- ストレッチ
- バウンス(はずむ)
- ウォーク(楽しく・幽霊のように・向きをかえる)
- スキップとギャロップ
- ランニング(かけ足)
- プリエ
- ジャンプ(ホップも含む)
レッスン7:音の効果
鍵盤を弾く普通の演奏法以外の、ピアノの内側で作る音を使った方法を紹介します。
以上、内容を詳しく見てきました。
後編ではポイントを紹介しますのであわせてご覧ください。


