今回はレオ・アルファッシー著の「ジャズ・ハノン」を取り上げます。
どのようなテキストなのでしょうか?
後編では実際に演奏して感じたポイントを紹介します。
私自身はクラシックを専門としていてジャズを本格的に学んだわけではなく、コードや基礎の理論を独学した程度です。その立場から感じたことを紹介します。
前半↓では内容を詳しく見ているので併せてご覧ください。
ポイント1:「ハノン」と「ツェルニー」の間
「ハノン」はピアノのテクニック教則本として有名です。
その内容は指の運動を均等にすることに特化していて、ひとつの短いフレーズを上行下行しながらひたすら繰り返して練習するというものです。
曲としてのスタイルや形式はほぼなく、ピアノを習っていた人の中では無機質に感じられた人も少なくないと思います。
一方この「ジャズ・ハノン」は、ひとつひとつが曲になっています。
コードや奏法、スタイルを学ぶ練習曲によって構成されています。
そのあり方はクラシックのテキストに当てはめるなら「ツェルニー30番」に近いと感じました。
繰り返し弾いていくうちに、響きと手の形や動きが繋がってくるというところも、ハノンよりツェルニー寄りです。
前半のアルペジオの練習曲などはハノンを意識した上行下行の動きもあります。
曲の難易度も「ツェルニー30番」に近いレベルです。
ポイント2:理論や歴史の知識も学べる
テキストは、解説と曲の二つで構成されています。
前半ではコードやスケールの知識、後半にはジャズが辿った歴史を大まかに学ぶことができます。
このテキストをきっかけに、解説に出てきたミュージシャンや用語を調べるとさらに広がります。
ポイント3:後半にいくにつれて難易度が上がる
後半にいくにつれて音やリズムが複雑になります。
臨時記号が増え、シンコペーションや付点のリズムが増えます。
このテキストに足りないところ
理論の全てを網羅することは不可能と著者も述べているように、基礎的な部分にわかりやすく触れているテキストなので「足りない」という言い方はふさわしくないかもしれませんが、取り組むときに工夫が必要と感じるところあげます。
- 全24曲中19曲がハ長調でなの、いろんな調へ移調させて練習するとさらに効果的だと感じた。
- 書いてある音符を追うだけではなく、コードとその構成音を意識して理論的に取り組むことで効果が上がる。
- 構成音をどう弾くかということに焦点を当てていて、リズムやノリについてはほぼ解説がない。
- 指番号が書かれていないので、自分で工夫をする必要がある。アルペジオの指の使い方の基礎などを知っておくとスムーズに取り組める。(本家の「ハノンピアノ教則本」などで学べる。)
- 使う人の工夫次第で効果が何倍にも上がると感じた。
こんな人におすすめ
- クラシックピアノを弾いていてジャズピアノに興味を持った人
- 曲を演奏しながらジャズを学びたい人
- ジャズの響きの曲でピアノのレベルアップをしたい人
テキスト概要
- 「ジャズ・ハノン」
- 著者:Leo Alfassy
- 翻訳:藤井 美保
- 1980年出版(英語版)、1995年日本語版初版
- 株式会社シンコー・ミュージック出版
- 全24曲
- 併用テキストなし
楽しいピアノライフを!
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。