ここでは安川加寿子訳編の「ピアノのテクニック」をご紹介します。
おすすめのポイントと、詳しい内容をひもといていきます。
- 1. ポイント1:音型がバラエティに富んでいる
- 2. ポイント2:鍵盤を見ずに弾けるようになる
- 3. ポイント3:初級から上級まで
- 4. 詳しい内容は?
- 4.1. 練習方法
- 4.2. 目的
- 4.3. レガート
- 4.4. 目次
- 4.4.1. レガート-スタッカート<ショパンーヴァン・ド・ヴェルドのシステム>
- 4.4.2. 指をほぐす練習(その1)各々の指を柔軟に自由に使えるために
- 4.4.3. 指をほぐす練習(その2)
- 4.4.4. リズムの練習
- 4.4.5. 指の関節の練習
- 4.4.6. 練習(ショパンーヴァン・ド・ヴェルドのシステム)
- 4.4.7. 練習<指をほぐして、トリルを準備する練習>
- 4.4.8. 繋留音
- 4.4.9. 練習<親指を通過するための>
- 4.4.10. 長音階・短音階
- 4.4.11. 音階のいろいろの型
- 4.4.12. 半音階
- 4.4.13. アルペジオ
- 4.4.14. 連続音(同音連打)
- 4.4.15. 二重音とレガート(3度、6度)
- 4.4.16. オクターブ
- 4.4.17. スタッカートの重音
- 4.4.18. 終止和音
- 4.4.19. アルペジオ練習の追補
- 5. こんな方にオススメ!
- 6. このテキストに足りないところ
- 7. テキスト概要
ポイント1:音型がバラエティに富んでいる
前半の「指をほぐす練習」では様々な音型を様々なリズムとアーティキュレーションで演奏し指の独立を促します。
似たようなスタイルのテクニック教本に「ハノン・ピアノ教本」がありますが、「ハノン・ピアノ教本」は2/4と4/4拍子のものがほとんどですが、「ピアノのテクニック」ではそれに加えて、9/8や6/8拍子があります。
拍子だけでなく音型もバラエティ豊かで、指があらゆる動きに対応できるようにほぐしていきます。
また黒鍵を使った音型があるがあることも特徴です。
この練習曲を弾くと手が温まり解されるのを感じられます。
ポイント2:鍵盤を見ずに弾けるようになる
あらゆる音型を弾くことは指をほぐすこと以外にも利点があります。それは鍵盤の幅の感覚が身につくことです。
鍵盤の幅の感覚が身につくと、曲を弾くときに手元を見ることを最小限にすることができます。
手のポジション感覚をもとに曲を弾くことができます。
前半の「指をほぐす練習」を繰り返し練習すると、手元を見なくても曲を弾くことにつながります。
ポイント3:初級から上級まで
たくさんの音型を弾いて手をほぐすところから、音階練習やオクターブ奏や重音のレガートなどかなり高度なテクニックまで習得することができます。
音階練習では、左右で同じ音を弾くだけではなく、左右の音を3度、6度、10度とずらして弾くので難易度が上がります。
オクターブ奏では、左右の手で1、5番の指でオクターブで音階を弾くという高度なテクニック練習があります。
手をほぐしポジション感覚を身につける初級段階から、高度なテクニックの上級レベルまで対応しています。
詳しい内容は?
著者のエルネスト・ヴァン・ド・ヴェルドは有名な導入メソッド「メトードローズ」の著者でもあります。
フランス語の原題は「Le déliateur」。フランスでは1926年に出版されています。
日本ではメトードローズと同じく安川加寿子さんの訳編で、1952年に出版されました。
メトードローズについてはこちらで詳しく解説しています▽
どのようなテキストなのでしょうか?
まず巻頭の訳者による「はしがき」をヒントに紐解いていきます。
練習方法
はしがきによると、「ショパンのシステム」によって勉強することを勧めています。
「ショパンのシステム」とは何かというと、以下のように書かれています。
すなわちこれは、スタッカートの弾き方です。
(略)ショパンは、スタッカートの練習はピアノの初歩者には一番大事なことだと言っております。
「ピアノのテクニック」p.2
スタッカートの練習を重視したシステムだということです。
目的
そしてこの練習曲の目的は以下の通りです。
- 手の重さをなくすること。
- 全部の指の強さを同じにすること。4と5の指の弱さをなくすること。
- 左手を右手と同じように巧みに弾けるようにすること。
それぞれの指と左右の手を、同じように強く、巧みにすることが目的です。
レガート
スタッカートの練習は疲労を伴う場合があるので、レガートの勉強を加えてこれを交互に用いるようにしてあります。
レガートの練習は、
- 柔軟さ
- 円滑さ
- 音の美しさ
を得ることができます。
次に項目ごとに内容を見ていきます。
目次
レガート-スタッカート<ショパンーヴァン・ド・ヴェルドのシステム>
ここで3つの練習の方法を学びます。
- レガートーマルカート…1つづつの鍵盤が深く底まで届くように。
- スタッカート…フォルテは鋭く突く。ピアノは手首の軽い運動で。
- レガーティシモ…指を鍵盤に近づけて指が滑っていくように。
指をほぐす練習(その1)各々の指を柔軟に自由に使えるために
8分音符からなる1小節の短い音型を繰り返しながら上行下行していく練習曲が、58曲あります。
これらを、前の項目で学んだ3つの方法で3回ずつ練習します。
各曲には3〜4つのリズムやアーティキュレーションの変奏があります。
指をほぐす練習(その2)
16分音符からなる短い音型を繰り返す練習曲が15曲、12/8拍子の曲が5曲あります。
リズムの練習
付点のリズムや8分音符と16分音符のを組み合わせたリズムからなる12曲、
6/8、9/8 、12/8拍子などの複合拍子のリズム練習曲が7曲、
シンコペーションの練習曲が4曲、
全23曲です。
指の関節の練習
2音のフレーズの練習を各指で、2つのリズムで練習します。
練習(ショパンーヴァン・ド・ヴェルドのシステム)
長い指(2、3、4)を黒鍵に、短い指(1、5)を白鍵におくポジションを練習し、応用します。全15曲。
練習<指をほぐして、トリルを準備する練習>
隣り合った音を連続して繰り返し弾く練習です。
1曲を7つのリズムとアーティキュレーションで練習します。
繋留音
1番や5番の指を押さえたまま他の指を動かし、全ての指の独立を目指します。全12曲。
練習<親指を通過するための>
1番の指が他の指の下をくぐる「指くぐり」や、1番の指の上を他の指が超える「指ごえ」のための練習です。全8曲。
次の音階への練習につながります。
長音階・短音階
24調の練習をします。
両手で同じ音で練習した後、左右で3度、10度、6度、離れた練習をします。
短音階は和声的短音階のみです。
音階のいろいろの型
反進行、シンコペーション、様々なリズムの練習、急速な練習を、全調で練習します。
半音階
3番の指で黒鍵を弾く練習です。
リズム練習、オクターブで両手で練習した後、短10度、短3度、長6度、反進行の練習をします。
アルペジオ
指使いごとに4つの調に分類して分散和音を練習します。
その後、減七、属七の分散和音の練習をします。
連続音(同音連打)
同じ音を素早く違う指で弾く練習です。全11曲。
二重音とレガート(3度、6度)
3度の和音をレガートで弾く練習を10曲、
6度の和音を4曲弾きます。
オクターブ
片手でオクターブを弾く練習です。
同じ音を繰り返すものから、音階をひくものまで、8曲です。
スタッカートの重音
片手で3度、6度、オクターブの和音をスタッカートで弾く練習を10曲。
終止和音
様々なカデンツァの形を全調で練習します。
アルペジオ練習の追補
展開形の指使いを全調で練習します。
以上、「ピアノのテクニック」の内容を見ていきました。
こんな方にオススメ!
- 演奏のレベルアップをしたい方
- 鍵盤の感覚を身につけたい方
- 指の動きの精度を上げたい方
- 効率的にテクニックを身につけたい方
このテキストに足りないところ
- 足りないというわけではないですが、楽譜がとても細かいので楽譜に慣れていない初級者の方は抵抗を感じることもあるかもしれません。同じパターンの部分は音符が省力されています。
テキスト概要
- 「ピアノのテクニック」(Le déliateur)
- 著者:エルネスト・ヴァン・ド・ヴェルド
- 訳編:安川加寿子
- 出版1926年(日本版は1952年)
- 音楽之友社
- レベル:初級〜上級
楽しいピアノライフを!
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。
“「ピアノのテクニック Le déliateur」安川加寿子訳編ポイントと内容をご紹介!” に対して1件のコメントがあります。