「ピアノランド」は全5巻からなるテキストです。
一体どのような教本なのでしょうか?
後編の今回は、実際に全ての曲を演奏して感じたポイントを紹介します!
前編〜内容紹介編〜は↓こちら↓をご覧ください。
ポイント1:なんといっても曲が魅力的、バラエティに富んでいる
「ピアノランド」のポイントは何と言っても、曲の魅力です。
全ての曲が、ピアニストで作曲家である著者の樹原涼子さんの作品です。
バラエティに富んだ響きとリズムで、どれも同じようなものがなく、それでいてアプローチしやすい曲ばかりです。
なんども繰り返し弾きたくなるような、惹きつけられる魅力をそれぞれの曲が持っています。
1〜3巻の巻頭「ようこそピアノランドへ」で綴られた著者のメッセージを引用します。
・・・初歩からずっと楽しく、毎日ピアノに向かうときワクワクし、ピアノがどんどん上手になる教本を思いえがき、少しずつ曲を書いてきました。
「ピアノランド1」p.2
音楽そのものから音楽の美しさや喜びを感じることができれば、子供たちは先生や親に強制されなくても音楽に夢中になると思います。
「ピアノランド1」p.2
曲の持つ音楽の魅力によって、進んでいくプログラムになっています。
ポイント2:勉強的アプローチを一切していない
音楽に関する理論や説明はほとんどありません。
2巻以降に見開き1ページの「指の練習曲」に解説がまとめられているのみで、そのほかのページは楽譜とイラストだけで構成されています。
3巻以降は右上に小さく演奏のポイントが書いてありますが、音符の読み方や、演奏の仕方を学ぶという解説はありません。
各ページごと可愛らしく親しみやすいイラストと楽譜で作られたその曲の世界観があり、解説がない分その世界に入りやすく感じます。
想像を存分に膨らませて音楽の国に入っていく、「ピアノランド」というタイトル通りがぴったりな構成とデザインです。
楽典については、併用テキストやほかのテキストで先生が説明するように勧められています。
ポイント3:イメージを掴んでから弾く
いきなりピアノを弾くのではなく、想像を膨らませてからピアノに向かうようになっています。
曲のレッスンの手順として、以下のように書かれています。
第1〜3巻のレッスンの手順
- 見る・・・タイトルや絵、歌詞を見て“曲の世界”をイメージする
- 聴く・・・先生が歌いながらピアノを弾くのを聴く
- 歌う・・・先生のピアノに合わせて歌う(歌詞で、階名で)
- リズム・・・手拍子や膝打ちなどでリズムを叩く
- ピアノ・・・片手、両手でゆっくりと弾く
第3巻では上の5つに続いて、さらに3つの手順があります。
- 連弾
- 弾き語り
- 暗譜
いきなり弾くのではなく、曲のイメージを膨らませてからピアノを弾くということを大切にされています。
これを踏まえて、4巻以降では、曲の全体像を掴みイメージを膨らませることを徐々に自分ひとりでできるように取り組んで行きます。
「自宅での練習」と題して、以下の手順が書かれています。
第4、5巻の自宅練習の手順
- 全体を見る・・・タイトル、拍子、調号、テンポ、表情記号、曲の構成をみる。ピアノを弾かずに心の中で音を響かせる。
- ピアノを弾く・・・曲の調の音階・和音を弾いて準備してから、ゆっくりと最後まで弾く。
- 部分→全体→部分→全体・・・部分ごとに分けて、難しいところは片手ずつ練習→通して全体を弾く→スムーズに弾けないところを重点的に弾く→通して弾く
ここでは、イラストや歌詞からイメージしていたことを、徐々に楽譜から広げられるようになっていきます。
全巻を通していきなり曲を弾くのではなく、想像してからピアノに向かう手順を取ります。
自宅で曲に親しむためにCDも発売されています。
このテキストに足りないところ
- 理論などは併用テキストの「ピアノランドたのしいテクニック」に譲っていて記載がない。
- 多くの教本が調を中心に進んでいくが、こちらのテキストは、調を自由に行き来する。調については併用テキスト「ピアノランド スケールモードアルペジオ」で詳しく学ぶことができる。
こんな人におすすめ
- いわゆる「クラシック」の曲だけではなくいろんなジャンルの曲を弾きたい方
- 雑然とした説明があるものが苦手な方
- 絵本が好きな方
- 楽しみながらピアノを弾きたい方
- お子さんと一緒に連弾を楽しみたい親御さん
教本概要
- 「ピアノランド せんせいといっしょにうたってひける」1〜5
- 音楽之友社
- 1992年出版
- 編著者:樹原涼子
- 併用テキスト:「ピアノランド たのしいテクニック」、「ピアノランドコンサート」
- レベル:導入〜初級終了程度・・・5巻が終了したらブルグミュラー、ギロック、カバレフスキー、プロコフィエフ、シューマンなどの小品を弾くことが推奨されています。
たのしいピアノライフを!
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。