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1946年にハンガリーのブタペストで初めて出版された「ピアノの学校 コダーイこどもの音楽教育」。

実におよそ75年前のテキストです!

2度の改訂を経て現在の内容のものになりました。

75年前のテキストですが、ピアノ教育の現場では今も重要な位置を位置をしめている「ピアノの学校」。

どういうテキストなのでしょうか?

今回はこちらの詳細に迫り、ポイントを紹介していきます!

「ピアノの学校 コダーイこどもの音楽教育」1、2

コダーイとは?

コダーイとは、ハンガリーの音楽家コダーイ・ゾルターン(1882-1967)のことです。

作曲家であり、民族音楽者、教育家でもあります。

コダーイ・システムとは?

音楽家コダーイのメソッドであるコダーイ・システムとは何でしょうか?

訳編者である加勢るり子先生が書かれた、第1巻の巻末の「この本をお使いになる先生へ」というところから一部抜粋します。

<コダーイ・システム>の名で世界中に流布されているハンガリーの音楽教育の本質とはいったいなんなのでしょうか。

それはひとことで言うと、うたうということです。

このうたうという言葉のもつ色合いの豊富さ、奥行きの深さ、重要さに思いを致してください。

ピアノはもちろん、打楽器を含める器楽音楽についても、その本質はうたうということにちがいはありません。

(中略)

音楽をうたうということを目ざして、このピアノ教則本はこどもにとっていちばんらくな、うたをうたうことから始めます。つぎに、この歌うことに全身昨日の働きを結びつけながら、ピアノ音楽への扉を開き、そして自然にピアノの世界へみちびいて行こうとします。

(中略)

この最初の導入部は、もう一つ、これらうたう教材が、子供の遊戯うたや民謡などから選べれていることとあわせて、コダーイ・システムの特徴であると言えましょう。

(中略)

1900年頃、世界的に民俗音楽に対する非常な関心が示された時、ハンガリーではそれまで<農民の音楽>としてさげすまれていた民謡をあらためて見直しました。そしてそこにかくされていた高度の純粋性の発見から、芸術音楽への可能性を認識したのです。

(中略)

ハンガリーでは、音楽家たちが、あたかも音楽学者であるかのような面を備え、そのうえ、音楽教育へも非常な関心を示しています。そしてその求心力となり、つねに研究の焦点となっているのが民族音楽であると言えます。

専門の音楽家を育てるだけでばかりでなく、すぐれた聴衆をも育て、人類共通の幸福のために、音楽の価値を広く知らせようという目的は、音楽教育の分野で、コダーイの不屈の情熱に支えられながら、ひとつのシステムとなって実りました。

加勢るり子(1969年)「ピアノの学校 コダーイこどもの音楽教育 第1巻」 音楽之友社

つまりまとめると

コダーイ・システムとは

  • 音楽をうたうことを目ざす
  • ピアノもうたうことから始める
  • あそびうたや民謡を弾く
  • 民俗音楽に焦点を当てた、音楽教育のシステム

ということだと言えます。

第1巻の内容は?歌から両手演奏へ

次にテキストの内容を見ていきます。

第1巻は各部に分けれてはいませんが、大きく見ると3つの部分に分かれます。

準備のパート

ひとつめは、導入として基本的なことが書かれている準備のパートです。

  • あそびうた
  • 鍵盤のなまえ
  • 楽譜の読み方
  • 手の体操
  • レガート奏法への準備

民謡を歌いながら演奏するパート

続いて、歌詞が付いている民謡を歌いながら片手ずつ演奏するパートです。

ここまでは、弾く前にまず、うたうことという指示があります。

メロディを覚えてからそれをピアノで表現する方向です。

  • ドのペンタコードのメロディに夜民謡
  • 両手交替の民謡Ⅰ
  • ラのペンタコードのメロディによる民謡
  • 両手交替の民謡Ⅱ

両手で演奏するパート

最後に歌詞の付いていない両手の演奏パートです。

  • 両手演奏
  • 付録として小さな練習曲
  • 連弾

曲は通し番号で116曲あります。

それに加えて付録22曲、9曲です。

第2巻の内容は?

第2巻は解説などはなく、さまざまなタイプの曲が集まった曲集です。

5つのパートに分かれています。

第一部 ハンガリーの作曲家の作品

コダーイやバルトークなどのハンガリー出身の作曲家による曲を32曲収録しています。

第二部 バロックおよび古典派のダンス

バッハ、テレマン、パーセル、クーラウ、モーツアルト、ベートーベン、ハイドンなどの

16小節程度の短い曲が28曲です。

第三部 標題曲

「標題曲」とは、「標題音楽」のことで、大まかにいうと、タイトルにわかりやすいものの名前がついている音楽のことです。

ここでは、例えば、

  • かわいいひよこ
  • 雨だれの音
  • みじかい歌
  • 機関車

などがあります。

第二部のバロックおよび古典派のダンスには、こういったものや出来事を連想できるようなタイトルはついておらず、

第二部と第三部はそういった意味で対照的な曲です。

タイトルがついた小さな曲が11曲です。

第四部 連弾

こちらは、さまざまな時代や国の作曲家による連弾曲が11曲あります。

付録

5つ目のパートは付録として、15のツェルニー練習曲と、#、♭それぞれ3つまでの音階が載っています。

ポイント1:はじめから移動ド唱法でうたう

移動ド唱法というのは、あまり聴きなれないかもしれませんが、音楽をドレミでうたう方法のひとつです。

移動ドの反対は、固定ドです。

固定ドは、ピアノの鍵盤の名前や、音符で示されている音で歌います。

一方移動ドというは、「ドレミファソラシド」と同じ並びの音は「ドレミファソラシド」で歌います。

ト長調で、「ソシレ」と書いてあったら、「ドミソ」と歌います・

へ長調で、「ファラド」とあっても。「ドミソ」です。

つまり、その調の何番目の音なのかということを意識しながら歌います。

移動ドでうたうよりも難しく感じるかもしれませんが、

音楽理論へと繋がる歌い方は「固定ド」よりも「移動ド」です。

巻末の編者の言葉によると、ハンガリーでは、音楽教育では音楽の読み書きを教えるソルフェージュ教育に力が入れられいて、その方法は全て「移動ド方式」です。

楽器を習い始める前に、ソルフェージュと歌で構成する「予備コース」過程が実施されていることが多いです。

「ピアノの学校」はこの特色を持った形式となっています。

ポイント2:生活から芸術へ

移動ド唱法から見てもお判りいただけるように、専門的な音楽教育のためのシステムであり、テキストです。

しかし、その入り口は、「わらべ歌」や「民謡」など、生活やあそびからはじまります。

身近なものからスタートして基礎を築き、「その基盤の上に音楽史の発展過程を再体験していく」(加勢るり子,1969)ように構成されています。

このテキストに足りたいところ

  • 子どものレッスンで使用するように作られているので、解説が少なめ
  • 音符の読み方などは簡単な図で表されるのみなので、進み方がとても速い。

こんな人におすすめ!

  • ハンガリーやポーランドなど東ヨーロッパの文化に関心がある方
  • すでに他の教本を進めているが、アメリカや日本の教本にはない響の曲を弾いてみたい方
  • バルトークが好きな方
  • 芸術教育の歴史に興味がある方

概要

  • 「ピアノの学校 コダーイこどもの音楽教育」1、2巻
  • 1946年ハンガリーで出版
  • 1969年日本で出版
  • 編者:ファントーネー・カッシャイ・マーリア、ヘルナーディ・ラヨシュネー、コムヤーティ・アラダールネー、マーテー・ミクローシュネー、インシェルト・カタリン
  • なし
  • 曲数:全2巻234曲
    1巻147曲
    2巻97曲
  • レベル:初級〜中級レベル
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