バイエルと並んで長年使われているロングセラー、「メトードローズ・ピアノ教則本」。
1901年にフランスで出版されました。
「メトードローズ(methode rose)」とは、「バラの方式」の意味です。
ピアノのテキストの題名が「バラの方式」とは、とてもロマンチックですね。
その題名の通り、彩り豊かできれいな曲がたくさん入っています。
日本語翻訳版は、ピアニストの安川加寿子さんによって1951年に出版されました。
出版から120年後の現代の日本でも広く使われ、コンクールの課題曲に選ばれることもあります。
現代の教本が多くの併用テキストがある中で、メトードローズはこの一冊。
内容がすべて同じで、音符が大きく横開きになった幼児用があります。
どのように弾くかという解説も細かく掲載されています。
▼幼児用の音符が大きいテキスト
こちらのポイントを3つ紹介します!
ポイント1:たかいドレミファソの音からはじまる
最近の多くの教本がピアノの真ん中のドから始まり、左右に少しずつ音を増やしていく覚え方が多いのですが、
メトードローズでは、真ん中のドから1つ高い(右側)のドレミファソの5つの音の並びを覚えて弾きます。
教本のいちばんはじめから5つの音を使います。
ドだけをなんども弾くということがなく、最初の曲からメロディが曲らしい。
そして片手づつ弾く練習をしたら、同じ音を両手で弾く練習をします。
はじめの曲から2つの音の響きを鳴らしながら演奏できるので、曲を演奏することの充実感を味わえますね。
ポイント2:美しい曲の数々
この教本の魅力は何と言っても、曲の美しさにあると思います。
シンプルで易しいけれど、綺麗な美しい曲がたくさんはいっています。
「かっこう鳥」や「とべ!小さな蜜蜂よ!(ぶんぶんぶん)」など、小学校の音楽で登場する曲も、
左手の伴奏が単純すぎずに綺麗な響きです。
また付点のリズムや、八分の三拍子というリズムや拍子もバラエティ豊かです。
クラシックピアノへのつながりがスムーズです。
ポイント3:ポジションの意識
指を置く場所=ポジションを意識して弾くことをはじめから学ぶことができます。
1つの鍵盤に1つの指を置くという基本のポジションを身につけると、この基本のポジションを手が覚えるととても便利です。
手を見なくても弾くことができるようになります。
そのことを想定したテキストの進み方です。
この本に足りないところ
- 解説の部分で5度や6度など楽典の知識が必要な部分があるので、他のテキストで補う必要がある。ただし読まなくても進める。
- はじめから両手で弾くので、指を動かすことが苦手で不器用だと思う人は、他の簡単な教本(「トンプソン はじめてのピアノ教本第1巻」や「ピアノドリーム1」など)をやってから入るといい。
- コード奏などポピュラー向けの演奏は出てこない
こんな人にぴったり
- クラシックの曲が好き
- クラシックなものが好き
- 歴史ある教本で学びたい
- フランスが好き
- フランスの童謡に興味がある
- あまり子どもっぽいテキストでは学びたくない
教本概要
- 「メトードローズ・ピアノ教則本 ピアノの一年生」
- エルネスト・ヴァン・ド・ヴェルド著 安川加寿子訳
- 1901年出版(日本語版は1951年出版)
- 併用曲集なし
- 構成:全6課
- 270曲
- レベル:導入から初級終了程度。こちらを終了するとブルグミュラーへの移行がスムーズです。
楽しいピアノライフを!
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。
“「メトードローズ」ってどんな本?【子ども向けピアノテキスト#5】” に対して5件のコメントがあります。