今回は田丸信明著「ぴあのどりーむ」をご紹介します。
ピアノ教室での使用率はかなり高く、広く親しまれている教本です。
こんな方におすすめです。
- 説明が多いものは苦手!
- かわいい絵本やイラストが好き!
- 無理なくピアノを楽しみたい!
- 童謡など優しいあたたかい曲が好き!
- 不器用な子のテキストを探している
「ぴあのどりーむ」の個人的評価はこんな感じです。
進みの速さ | ★☆☆☆☆ |
童謡など子どもに親しまれる曲の多さ | ★★☆☆☆ |
クラシック曲の多さ | ★★★★☆ |
ポップス曲の多さ | ☆☆☆☆☆ |
学べる理論の多さ | ★☆☆☆☆ |
テクニック解説の多さ | ☆☆☆☆☆ |
不器用さんへの対応度 | ★★★★☆ |
イラストの多さ | ★★★★★ |
おすすめポイントと、それぞれの巻の詳細をひもといていきます。
- 1. ポイント1:ゆっくりとスモールステップで進む
- 2. ポイント2:まるで絵本!イラストが豪華
- 3. ポイント3:わかりやすいリズム
- 4. ポイント4:右手は旋律、左手伴奏の曲が多い
- 5. ポイント5:長調は#♭3つまで。短調はイ短調のみ
- 6. テキスト概要
- 7. 構成
- 8. 幼児版
- 8.1. 特徴
- 9. 第1巻
- 9.1. 目標
- 9.2. 第1巻の特徴
- 10. 第2巻
- 10.1. 目標
- 10.2. 特徴
- 10.3. 曲もく
- 11. 第3巻
- 11.1. 目標
- 11.2. 特徴
- 11.3. 曲もく
- 12. 第4巻
- 12.1. 目標
- 12.2. 特徴
- 12.3. 曲もく
- 13. 第5巻
- 13.1. 目標
- 13.2. 特徴
- 13.3. 曲もく
- 14. 第6巻
- 14.1. 目標
- 14.2. 特徴
- 14.3. 曲もく
- 15. 第7巻
- 15.1. 目標
- 15.2. 特徴
- 15.3. 曲もく
- 15.4. この教本に足りないところ
「ぴあのどりーむ」のおすすめポイントを5つ紹介します。
ポイント1:ゆっくりとスモールステップで進む
1つの学んだことに対して数曲を弾いて定着させていきます。
ゆっくりのペースで進んでいきます。
テキストの「レッスン目標」の項目にも「できるだけ負担のかからないよう、やさしいカリキュラム構成で」と書かれています。
ポイント2:まるで絵本!イラストが豪華
イラストレーターの永田萠さんによる可愛らしい絵が、曲とセットになっています。
はじめのうちはイラストと楽譜の分量が同じぐらいです。
絵から曲のイメージを膨らませることができるとても贅沢なテキストです。
イラストが多いことで、その分説明の文章が少なく、楽譜がとてもシンプルです。
ごちゃごちゃしていなくてスッキリしたデザインです。
いろいろなことが書いてあると気が散りやすいタイプにはぴったりなデザインです。
ポイント3:わかりやすいリズム
リズムの点から見てもゆっくりと進むので、3巻までは速い音符(八分音符や十六分音符)やはずんだリズム(付点四分音符)などは出てきません。
3巻までの60曲程度のほとんどが、四分音符(1拍)や二分音符(2拍)で構成されています。
そのためリズムがわかりやすく、音符の高さを読み慣れることに集中できます。
ポイント4:右手は旋律、左手伴奏の曲が多い
歌の曲などに多い右手で旋律を弾き、左手で伴奏をする形の曲がほとんどです。
この形に慣れていると、歌の曲や古典派の曲にスムーズに移行することができます。
右手も左手もメロディを演奏する曲は苦手に感じる人が多いので、難しさを感じずに進むことができるような構成になっています。
ポイント5:長調は#♭3つまで。短調はイ短調のみ
4巻から調の勉強が始まり、7巻までで調性記号3つまでの長調と、短調1つを学びます。
全24調あるうちの9つの調を扱っています。
短調はイ短調の和声的短音階のみです。和声的短音階という名称も取り扱いません。
短調を細かく扱わないことで、ここでもハードルを低くして負担を減らしています。
テキスト概要
タイトル | ぴあのどりーむ |
著者 | ヤマハ |
出版年 | 1993年出版 |
出版国 | 日本 |
全巻 | 全7巻 |
曲数 | 157曲 |
併用テキスト | ワークブックあり |
レベル | 6巻を終えるとスムーズにブルグミュラーへ進む |
構成
全7巻です。
当初6巻まででしたが2018年に7巻が発売されました。
また第1巻の前に幼児版があります。
そして、1〜6巻には併用テキストとして、「レパートリー」と、「ワークブック」があります。
どの巻にも「先生・ご両親へ」と題された各曲の指導ポイントが書かれています。
それぞれの曲の下に対応する併用テキストのページが書かれています。
続いて各巻の特徴をご紹介します。
幼児版
幼児版は1〜6巻より8年後に出版されました。
ここでの目標は次のように書かれています。
学習的な要素をできるだけ少なくし、絵によって曲のイメージをふくらませ、楽譜と鍵盤に親しんでいくことを目標としています。
「ぴあのどりーむ 幼児版」
特徴
- 見開き1ページに4小節の大きな楽譜が載っています。
- 歌詞とタイトル、それに合ったカラフルなイラストがあります。
- 全14曲。
- 真ん中のドからはじまります。
- 左手は「ドシ」右手は「ドレ」の2音だけ使います。
第1巻
目標
第1巻での目標は次のように書かれています。
初めてピアノを習う子供たちにできるだけ負担のかからないよう、やさしいカリキュラム構成で編集されています。
「ぴあのどりーむ1 p.4」
そして、「ここでも幼児版と同じように、学習要素をできるだけ少なくして、絵によっての曲のイメージをふくらませ、先生と一緒に楽しく歌いながら、楽器と鍵盤に親しんでいく」
という幼児版と同じ目的が引き継がれています。
第1巻の特徴
- すべての曲に歌詞がついています。
- 出てくる音は右左3音まで。
- 使う指は左右とも1、2、3番のみです。
- 全26曲の中、12 曲に先生用の伴奏がついています。
- 伴奏は生徒の低い方で弾くものだけでなく、高い方で弾くものもありますが、全て片手で弾く補助的なものです。
- 1曲の長さは、15番までは4小節、16番以降はほとんどの曲が8小節でできています。
全てのページにカラフルでキレイなイラストがついています。
第2巻
目標
少し音域を広げて5指すべてを使い、音価とリズムを正しく捉えながら、拍子感を持って楽しく演奏することを目的としています。
「ぴあのどりーむ2」p.4
特徴
- ヘ音記号、ト音記号ともに5つの音と鍵盤を覚えます。
- 曲の間に、リズムを覚えるページと、鍵盤と音符を覚えるページが挟まれています。
- 歌詞がついているのは5曲のみになります。
- 全20曲。
曲もく
著者の田丸信明作曲は16曲です。それ以外は海外の童謡など、聞いたことがあるメロディを使われています。
- きらきら星
- アルプス一万尺
- メリーさんのひつじ
- 森の音楽会など
第3巻
目標
ここでの目標は次のように書かれています。
さらに音域を広げ、音楽用語・記号などを学習することによって表情のある演奏をすることを目的としています。
「ぴあのどりーむ3」p.4
特徴
- スラーやスタッカート、フォルテ、ピアノなどの記号を学びます。
- 音域も大きく広がります。
- 全20曲。
- #や♭が出てきて、さまざまな雰囲気の曲が出てきます。
曲もく
20曲中、著者作曲は11曲です。その他は海外の童謡など、聞いたことがある旋律の曲は次のものです。
- 10人のインディアン
- ハッピー・バースデイ
- かっこう
- 楽しい夜
- ちょうちょう
- ぶんぶんぶん
- 木馬の兵隊さん
- 森の音楽会
- マーチ(こいぬのマーチ)
※森の音楽会は第1巻はハ長調で右手のみでひきましたが、ここではト長調(#は出てこない)で両手で弾きます。
※ちょうちょうやぶんぶんぶんなど歌として親しまれているものには歌詞が書かれています。
第4巻
目標
ここでの目標は次のとおりです。
さらに音域を広げ、強弱や速度を表す記号を学び、また指くぐり指かえ等によって鍵盤上の手のポジションを動かすことを経験し、より自由で表情豊かな演奏をすること
「ぴあのどりーむ4」p.4
特徴
- 調の学習が始まります。
- ハ長調とト長調の音階と和音を練習します。
- 最後に「楽典」ページがあり、この巻で学んだ記号や用語がまとめられています。
- 全27曲。
曲もく
27曲中、著者の作曲が15曲で、その他は、次のような海外の童謡や、ピアノの定番ツェルニー作曲の旋律や、オーケストラの旋律が入っています。
- ジングルベル
- げんきなおどり
- ロンドン橋
- しりとり
- おほしさま
- こぎつね
- あしおとたかく
- 聖者が街にやってくる
- そよかぜ(ツェルニー)
- 人魚の歌(ウェーバー)
- 小さなワルツ(ツェルニー)
- きつつき
第5巻
目標
ここでも目標は次のとおりです。
さらに音域が広がり、音符・休符や用語・記号・調性などの楽典要素も増えます。また手の交差を含んだ長い曲の演奏をも経験することによって自由で表情の豊かな演奏をすることを目的としています。
特徴
- へ長調とニ長調の音階と和音を学びます。
- 全27曲
曲もく
27曲中11曲が著者作曲です。
そのほかの曲は、海外の童謡や、クラシックの曲などを演奏します。
- スイスのうた
- おやすみなさい
- エーデルワイス(R.ロジャース)
- インディアンのおどり(コルトー)
- アビニョンの橋の上で
- かわいいオーガスティン
- モデラート(ディアベリ)
- おたんじょう日マーチ(ケーラー)
- 夕べのうた(ケーラー)
- エチュード(シュッテ)
- メヌエット(バッハ)※途中まで
- おどり(カバレフスキー)
- ロンド(モーツァルト)
- 春のよろこび
- おもちゃの行進(ストリーボック)
- 小さなようせいのワルツ(ストリーボック)
第6巻
目標
ここでの目標は次のとおりです。
さらに音域が広がり、音符・休符や用語、記号、調性などの楽典要素も増え、装飾音などを含んだ高度な演奏技術も習得し、初級から中級への足がかりとすることを目的としています。
「ぴあのどりーむ6」p.4
特徴
- 短調の音階を学びます。なお、ここでの音階は和声的短音階のみです。
- イ短調、イ長調、変ロ長調を学びます。
- 全22曲。
曲もく
22曲中、著者作曲は10曲です。そのほかの曲は次の曲です。
- まほうの笛(モーツァルト)
- ロングロングアゴー(ベイリー)
- 楽しいおどり(ツェルニー)
- 楽しい朝(ストリーボック)
- ギャロップ(ブレスラウアー)
- ちょうちょうを追って(ストリーボック)
- 舞踏会(グルリット)
- しずかな春ソナタK.331より(モーツァルト)
- 楽しいお休み(ストリーボック)
- エリーゼのために(ベートーベン)※前半のみ
- トルコ行進曲(ベートーベン)
- つむぎ歌(エルメンライヒ)
第7巻
目標
用語、記号、調性などの楽典要素も増え、さらに高度な演奏技術を習得します。より表情豊かな演奏を心がけ、中級への移行期の足がかりを作ることを目的としています。
「ぴあのどりーむ7」p4
特徴
- 変ホ長調を学びます。
- ここではイラストの割合は少し減ります。
- 全19曲。
曲もく
10曲は田丸信明作曲です。それ以外の曲は以下の通りです。
- メヌエット(モーツァルト)
- ワルツ(ブラームス)
- メヌエット(クリーガー)
- 間奏曲(シューベルト)
- そよ風のワルツ(ロルセーズ)
- 知らない国(シューマン/編曲田丸信明)
- 人形の夢と目覚め(エステン)
- エリーゼのために(ベートーベン)
- 野ばらにに寄せて(マグダウェル)
この教本に足りないところ
- 出てくるリズムが少ないので、ノリの良い感じの曲が少ない。
- コードネームや伴奏法などは扱わないのでポピュラーの曲を弾きたい方は他の教材で補うことが必要。
- 独学ではなくレッスンを受けることを想定されているので、手のフォームや演奏法についての解説はない。
- ポリフォニー音楽がほぼない
- 和音が限られている
楽しいピアノ ライフを!
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。
“導入教本紹介田丸信明著「ぴあのどりーむ」幼児版、1~6【子ども向け編#2】” に対して3件のコメントがあります。
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