日本のピアノレッスンの定番「みんなのオルガンピアノの本」(全4巻)をご紹介します。
- オルガン・ピアノの本ってどんな人に向いてるの?
- どんなことが身につく?
- どんな曲を弾くのかな?
こんなことが気になる方に解説します!
オルガン・ピアノの本の個人的評価はこんな感じです。
進みの速さ | ★★★★★ |
曲の難しさ | ★★★☆☆ |
不器用さんへの対応度 | ★☆☆☆☆ |
子どもに親しまれてる童謡曲などの多さ | ★★☆☆☆ |
クラシック曲の多さ | ★★★★☆ |
ポップスの曲の多さ | ☆☆☆☆☆ |
学べる理論の量 | ★★☆☆☆ |
テクニックの解説量 | ☆☆☆☆☆ |
次にポイントを紹介します。
ポイント1:進度がはやくてムダがない!
数ある子ども向けの教本の中でも歴史があるこの教本。
多くの教本の中でも内容はとてもシンプルです。
1〜4つの音やことを覚え、その音を使って1〜2曲演奏して身につけます。
「みんなのオルガンピアノ1」より
とても無駄がなく、効率的な進み方です。
そのため子どものレッスンに使用するときも、とても飲み込みが早く要領がいい子に向いています。
また小学生中学年以上になってからピアノを始めた子や、大人の初心者など、理解力が十分身についている子にも向いています。
または、数冊を並行して使用して補強しながら使います。
多くの初級レベルの教本が終了までに200〜300曲以上が収録されているのに対し、オルガンピアノは150曲弱です。
必要なことがぎゅっと凝縮されています。
こんな方に向いています!
- 飲み込みが早く要領がいいお子さん
- 小学生、中学生以上になってはじめた方
- 大人の初心者
ポイント2:早い段階から1人で曲が弾ける
進み方が早く、はじめから両手を使います。
「みんなのオルガンピアノ1」より
バイエルやメトードローズのはじめの方にあるような、片手で単純な練習曲をいくつもこなすということがありません。
1巻の初めの数曲は先生と連弾をして曲のハーモニーが完成するようになっていますが、10曲目以降は、1人で完結する曲が出てきます。
子どもが飽きずに楽しくレッスンに取り組めるような工夫がされています。
単純な練習曲を避けたいという方に向いています。
ポイント3:クラシックピアノの演奏の第一歩
今流行りのポピュラー曲を演奏することは想定されておらず、クラシックのピアノ曲(バロック・古典派・ロマン派・近現代)の分野の演奏を目的としてると思われます。
ポピュラー曲を演奏するときに必要となるコード奏や、リズムパターンなどの扱いはありません。
ポイント4:楽譜が見やすい!
楽譜のサイズがほどよく、音符の読みやすさに優れています。
「みんなのオルガンピアノ1」より
大人に比べて視覚認識が未熟な小さなお子さんとレッスンをしていると、楽譜の読みやすさに特徴があることがわかります。
楽譜が大きければ読みやすいというわけではなく、線と線の幅、線の濃さ、音符の丸の大きさ、丸と丸の幅など、全体的なバランスが関係します。
オルガンピアノの楽譜はバランスがよく、すっきりしていて読みやすいです。
ポイント5:レッスンで内容を発展していくことが前提!
「オルガン・ピアノの本」はヤマハのレッスンから開発されて誕生しました。
第1巻の「はじめに」には次のように書かれています。
楽曲のタイトルやイラスト、歌詞や先生の伴奏を手がかりに、生徒さんと一緒にイメージをたくさんふくらませてみてください。
導入時にさまざまなアプローチをすることで、楽曲の雰囲気やテンポ感も音楽的に指導することができます。
自由に工夫してレッスンを楽しんでください。
「新版 みんなのオルガン・ピアノの本1」より
「みんなのオルガン・ピアノ」の教材はとてもシンプルで、解説文などはほとんどありません。
「みんなのオルガンピアノ1」より
掲載されている曲を材料に、レッスンで展開していくことを目的に書かれています。
テキストのみをこなすだけで総合的に身につくタイプとは違うことがわかります。
「みんなのオルガン・ピアノ」を軸として、副教材をふんだんに使いながらレッスンで自由に展開していきたい先生のレッスンに向いています。
進み方は?
真ん中のドから少しずつ音を増やしていきます。
はじめから左右両方の手を使い、同じように音を広げていきます。
第1巻でいっきに五線の中におさまる22個の音符を覚え、2巻以降は主に加線の音を覚えます。
その後は調や拍子を学ぶ形で進み、いろいろスタイルやリズムの曲を弾いていきます。
それぞれの巻で主に学ぶ項目を見てみます。
第1巻
第1巻では全部で34曲あります。
その中で覚える音符の範囲はこちら↓です。
5本の指を移動させずに弾ける5指のポジションを、いろいろなところで弾く形で、音を増やします。
指を広げたり、くぐらせたりというテクニックはまだ出てきません。
覚える音符が多いので、定着させるためにもこちらの↓ワークブックの併用がおすすめです。
第2巻
第2巻で覚える音は赤い音符の部分です。
1巻に比べて覚える音符はグッと減ります。
ハ長調のスケールと和音をここで学びます。
第3巻
第3巻で学ぶのは赤い音符の部分です。
ここでは6/8拍子、3/8拍子を弾きます。
そして#・♭1つまでの長調短調のスケールと音階を弾きます。
(ハ長調・ト長調・へ長調・イ短調・ニ短調・ト短調)
第4巻
第4巻で覚えるのは赤い音符の部分です。
ここでは三連音符や、十六分音符など細かなリズムを学びます。
そして、#・♭2つの長調短調、#・♭3つの長調のスケールを学びます。
(ホ短調・ニ長調・変ロ長調・変ホ長調・イ長調)
どんな曲を弾く?
練習曲として、大きく4つに分類しました。
- ヤマハの曲や著者自身の作曲
- 童謡などの子どもが日常で親しんでいる曲
- クラシック曲やクラシックのメロディをもとに編曲された曲
- そのほか外国の民謡など
外国の民謡がもとでも、現代の子どもに親しまれいてる曲は「童謡など」に分類しました。
それぞれの巻に収められている❷〜❹の曲をまとめます。
第1巻
ここで演奏する曲は次のように分類できます。
ほぼ6割がヤマハの曲や著者自身の作曲です。ドだけの曲など、音が少ないものは学習のために作曲されたものが多いので、この比率になっていると思われます。
残りのうちの2割強が子どもがどこかで耳にしたことがあるような親しみのある曲です。
全34曲のうちヤマハの曲と著者による曲以外は、次の曲を弾きます。
童謡など子どもに親しまれている曲
- アルプス一万尺
- ほたる(わらべうた)
- 10人のインディアン(アメリカ民謡)
- いちろうさんのまきばで(ドナルドおじさん/アメリカ民謡)
- ぶんぶんぶん
- ちょうちょう
- 子犬のマーチ(外国の曲・こどものマーチ)
- おうま
クラシックのメロディ
- びっくりシンフォニー(ハイドン)
- バイエル
そのほか
- ヨット(外国の歌)
- おどり(外国の曲)
- たんぼのなかのいっけんや(アメリカ民謡)
- トロイカ(外国の曲)
第2巻
ここで演奏する曲は次のように分類できます。
全32曲のうち、外国の民謡や、外国で古くから親しまれている曲が4割と最も多くあります。
ついでヤマハの曲や著者自身の作曲が1巻同様に多くあります。
どの曲もシンプルで親しみやすく覚えやすいメロディです。
童謡など子どもに親しまれている曲(5曲)
- ちゃいろのこびん
- むすんでひらいて(外国曲)
- かえるのうた
- めりーさんのひつじ
- 山の音楽家(かわいい音楽家)
クラシックのメロディ(5曲)
- バイエル2曲
- こうまがはしる(フォスター)
- ぶとうかい(ウェーバー)
- かわいいおどり(グルリット)
そのほか(13曲)
- ヘンゼルとグレーテル(外国曲)
- こいぬ(外国曲)
- おもちゃのへいたい(フランス民謡)
- やまのぼり(外国曲)
- おやすみなさい(アメリカ民謡)
- かっこう(ドイツ民謡)
- ああかわいい(フランスの曲)
- パンダのこもりうた(フランスの曲)
- すずのへいたいさん(外国の曲)
- つきのひかり(フランス民謡)
- いちばんぼし(フランス民謡)
- スペインのおどり連弾(スペイン民謡)
- ほろばしゃがやってくる連弾(アメリカ民謡)
第3巻
3巻では、クラシック曲が4割強とグッと増えます。
全30曲のうち、童謡など子どもに親しまれている曲は1曲のみで、著者作曲の曲2曲、クラシックの曲は13曲、外国の民謡などは14曲です。
童謡など子供に親しまれている曲
- グー・チョキ・パー(フレール・ジャック)/フランスの曲
クラシックのメロディ
- 狩(パガニーニ)
- バグパイプ(バーディー)
- 天国と地獄(オッフェンバック)
- のんきなジャック(テュルク)
- ドイツの踊り(ベートーベン)
- 人魚のうた(ウェーバー)
- バガデル(ディアベリ)
- ライオンの行進(サン=サーンス)
- 木こり(ストレツキ)
- おもいで(ベイリー)
- ガボット(ヴィットハウアー)
- 小さなプレリュード(シュッテ)
- メヌエット(L .モーツァルト)
そのほか
- 楽しい日(ドイツの曲)
- かじや(外国の曲)
- ノルウェーのおどり(ノルウェー民謡)
- ドイツの古い歌(ドイツ民謡)
- かわいいミュゼット(外国の曲)
- いいことありそう(イギリスの曲)
- タランテラ(外国の曲)
- なかよし(ドイツ民謡)
- かわいいアウグスティン(スワビア民謡)
- ポーランドの踊り(外国の曲)
- 子もり歌(外国の曲)
- ペトールーシュカ(ロシアの曲)
- むかしの歌(外国の曲)
- ハイキング(外国の曲)
第4巻
全28曲のうち、6割以上がクラシックの曲です。童謡など子どもに親しまれている曲は1曲、クラシックの曲は18曲、外国の民謡などは7曲です。
3巻までに比べると、クラシック曲がさらに増えます。
子どもに親しまれている童謡など
- アヴィニョンの橋の上で(フランス民謡)
クラシック曲(18曲)
- ファンファーレ・メヌエット(ダンコンベ)
- くまのおどり(エステン)
- おばけやしき(カバレフスキー)
- ドイツのおどり(ハイドン)
- 山のこだま(エステン)
- メヌエット(J.C.F.バッハ)
- 夕べの祈り(ブレスラウアー)
- つむぎ歌(エルメンライヒ)
- チャイニーズ・セレナーデ(フリーゲ)
- めんどりのひとりごと(ランキ)
- メヌエット(ラモー)
- カプリース(グルリット)
- 舟歌(ハック)
- 遊んでいる子どもたち(バルトーク)
- 「ピアノ初心者のために」より第17番(バルトーク)
- 昔のおはなし(カバレフスキー)
- レントラー(シューベルト)
- トルコのマーチ(ディアベリ)
外国の曲(7曲)
- ロシアのおどり(ロシア曲)
- マラゲーニャ(スペインの曲)
- きつつき(外国の曲)
- 野いちご(フィンランド民謡)
- ロンドン橋(イギリス民謡)
- マズルカ(ポーランド民謡)
- 連弾わらの中の七面鳥(アメリカ西部民謡)
初版は1957年で、ヤマハのスタッフが編集に携わり作られました。
その後2015年に「新版」が現代のレッスンに合わせて曲順が変わり、新しい曲も加わって出版されます。
現在では旧版、新版共に楽器店に並んでいます。
▼旧版
▼新版
▼旧版にはCDつきのものも出版されており、独学する時にはありがたいですね。
この教本に足りないところ
- 子どもが先生にレッスンを受けることを想定して作られているので、掲載されていることは最低限に絞られている。ワークブックや副教材で補うのがおすすめ。
- 手のフォームや演奏法、ピアノの構造、ペダル奏法などは掲載されていない。
こんな人におすすめ
- 要点を絞って効率的に学びたい
- クラシックや各国の民謡を弾きたい
- 器用さには自信がある
- 歴史があるテキストで学びたい
- 説明は多すぎない方がいい
- 大きい音符を見て弾きいたい
- ごちゃごちゃしておらず、シンプルでわかりやすいデザインのものが好き
教本概要
タイトル | 新版 みんなのオルガン・ピアノの本 |
著者 | ヤマハ |
出版年 | 2015年 |
出版国 | 日本 |
全巻 | 全4巻 |
曲数 | 146曲(練習曲を含む) |
併用テキスト | ワークブックあり |
レベル | 4巻を終えるとスムーズにブルグミュラーへ進む |
楽しいピアノ ライフを!
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。
“ピアノレッスンの定番!「新版みんなのオルガン・ピアノの本1〜4」【子ども向け編#1】” に対して1件のコメントがあります。
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