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今回はテクニック教本の「プレディーピアノ教本」を紐解いていきます。

ハノンに比べてあまり耳にする機会がないこちらのテキストですが、よく読み込んでみるととても奥が深い教材です。

いったいどのようなテキストでしょうか?

プレディーピアノ教本

プレディーとは?

1810年生まれのドイツのピアノ教師です。

1810年といえば、ピアノの詩人ショパンが生まれた年でもあります。

プレディーはピアノテクニックの基礎を作る研究で優れた成果をおさめました。

メンデルスゾーンに招かれてライプツィヒ音楽院のピアノ教師として務めた経歴もあります。

彼が58歳の時、1868年に「プレディーピアノ教本」を出版しました。

「ハノンピアノ教本」と呼ばれ親しまれている同じくピアノテクニックの教本より

5年早く出版されています。

どんなテキスト?

日本では「ピアノ教本」というタイトルで出版されていますが原題は「Technische Studien: für das Pianofortespielピアノ学習者のためテクニック研究」というタイトルです。

シャーマー版はこちらから見ることができます。

IMSLP「Technische Studien: für das Pianofortespie

その内容は練習曲といういうよりは技術を上達させる目的に書かれた音形のパターンが、たくさん載っているものです。

「ピアノ教本」としてイメージされる音符の読み方や音楽の知識を学びながら上達をしてくタイプの教本とは違います。

音符が読めることや調の知識があることが前提になります。

基礎知識があることを前提として、2つの音の弾き方からテックニックに焦点を当てて学びます。

レベルは?

全体的なレベルは初級から上級です。

全音楽譜出版の背表紙には星の数で難易度が示されていおり「プレディーピアノ教本」は星2つです。

星2つというとブルグミュラー25の練習曲と同じレベルです。

初級〜中級レベルの表示ですがこれはかなり曖昧です。

確かに2つの音の練習から始まることを考えると簡単そうに思えますが、後半はかなり難易度が高くなります。

ソナタやショパンエチュードに匹敵する難しさがあり、

上級の曲に取り組んでいる人にとっても有益です。

プレディーがピアニストを育てる音楽院でピアノを教えていたことを踏まえると、上級レベルにも対応していると考えられます。

ハノンとの違いは?

プレディーは2音から

ハノンは5本の指を全て使うことからスタートするのに対して、プレディーは2音の弾き方からスタートします。

2音でのタッチの練習からはじまります。

ハノンのような5本の指を全て使い、ポジションを移動しながら上行下行をする練習は第3部から始まります。

その点では、ハノンよりも前の段階で使うことができます。

プレディーは全調練習

プレディーは第1部の練習から黒鍵を使った全ての調での練習が始まります。

というのも、黒鍵と白鍵でタッチが変わることなく、全ての指で均等に演奏できるようになることを技術向上の目的の一つにあげています。

詳しい内容を次に見ていきます。

テキスト内容

大きく分けて次の2つの部分から構成されています。

  • 練習方法や手の形などの解説(序文〜第1〜5章〜ヒントとアドバイス)
  • 練習曲(第1部〜第9部)

大部分が❷練習曲ですが、❶練習方法や手の形などの文章部分も学びが多いので、ぜひ手にとって参考にしてください。

次に内容を詳しく見ていきます。

序文

ここでは、プレディのピアノ上達への勤勉な考えがまとめられています。

もっとも徹底的な勉強こそ、もっとも近道なのです。

「プレディーピアノ教本」序文より

テクニックの研究を避けるピアニストに対して、テクニック練習の重要性を説いています。

ピアノの勉強は毎日4〜5時間は必要です。ピアノを職業として選んだ人たちは、もちろん、1日の大部分の時間をピアノの練習にかけるべきです。一日4時間というのは最小限です。

「プレディーピアノ教本」序文より

第1,2章

ここでは姿勢や手の形などピアノの演奏の方法について短く説明されています。

第3章 タッチ

ここではタッチについて詳細に解説しています。

タッチを次の5つに分類しています。

  • レガート
  • スタッカート
  • レガーティッシモ
  • ポルタメント
  • 半スタッカート(ノン・レガート)

第4章 効果の上がる練習方法

もっとも大切なこととして次のことをあげています。

はやく上達するためには、

  • 毎日、練習を欠かさないこと。
  • 目標をたてて、順序よく時間を分けて練習すること。
「プレディーピアノ教本」P7

練習時間の分け方としては次の順番です。

  • 指の訓練
  • 音階、エチュード、ソナタ(テクニックが勉強の目的ではないもの)
  • 初見演奏
  • すでに学び終えた曲

ただし、規則にがんじがらめにならずに時には順番を変えたり、工夫することが大切としています。

第5章 指の訓練方法

ここではこのテキストの使い方が解説されます。

要点をまとめると次のとおりです。

  • はじめて練習する人や悪い癖いがついていて改善をしたい人は第一部から始める。
  • 片手ずつ、ゆっくり、注意深く練習する。
  • 片手ずつ思い通りに弾けるようになってから両手の練習に入る。
  • 手や指に注意が払えるように、譜を覚えてから練習する。
  • 新しい練習に入る時、今までの練習をやめないように。
  • 1の指には力を入れない。
  • ゆっくり指が動かせるようになったらテンポを速める練習を始める。
  • ただ指を強くするだけではなく、タッチによって出る音色をよく聞き、どの瞬間を捉えても表情のある美しい澄んだ健全な音色が出せるように学ばないといけない。

ヒントとアドバイス

シャーマー版で第6章〜第10章と結論として書かれていることを、全音楽譜出版では「ヒントとアドバイス」として要点をまとめています。

参考までにシャーマー版での各章のタイトルは次のとおりです。

  • 第6章 エクササイズと大曲の練習
  • 第7章 初見演奏
  • 第8章 運指
  • 第9章 旋律の演奏
  • 第10章 スタイル
  • 結論

第1部 指の練習

指の練習は、弾く前の指のあげ方から始まります。

  1. 指をできるだけ高く上げる
  2. 中くらいにあげる
  3. 鍵盤から離れない

鍵盤に近くなるほどに音符が細かくなります。

この練習をした後に次の練習に入ります。

  • A2本の指の練習(1〜12番)
  • B3本の指の練習(1〜9番)
  • C4本の指の練習(1〜12番)
  • D5本の指の練習(1〜46番)
    ハ長調で書かれているものは全調で弾くように指示があります。

どの練習も、はじめに取り上げた指のあげ方の種類で練習します。

第2部 手を鍵盤に固定させて指を動かす練習

「手を鍵盤に固定させる」というのはある指を弾いたままにした状態です。

例えば1番は1〜4の指でドレミファの鍵盤を押したまま、5の指でソを弾く練習です。

1〜26番

第3部 腕の移行の練習

ここではポジション移動の練習です。

「手が鍵盤の上をなめらかにすべっていくように静かに移動する練習です。指が移り変わるとき、手がはげしく動いたり、ひかない指がのびたりしないように気をつけます。

「プレディー ピアノ教本」全音楽譜出版p.24
  • A.2本の指の練習(1〜5)全部の調で弾く指示があります。
  • B.3本の指の練習(1〜7)
  • C.4本の指の練習(1〜12)
  • D.5本の指の練習(1〜6)
  • E.分散6度(1〜22)と分散オクターブ(1〜6)

ここの練習は有名なハノンの練習曲に似ています。

決まった音形をポジション移動しながら1オクターブ上行し、反対の動きをして下行して戻ってきます。

第4部 音階

ここで練習の方法が書かれています。

A.全音階

準備練習(1〜13番)を行った後、

長音階、旋律的短音階、和声的短音階の各調を練習します。

その後、長音階と旋律的短音階、反進行の各調を左右の手で10度、6度離れて練習します。

B.半音階

ここでは様々な指使いで半音階を練習します。

第5部 分散和音(アルペジオ)

A.三和音

準備練習が5パターンあり、これを長短全ての調で練習します。

長いアルペジオ(グランド・アルペジオ)の練習

4オクターブの長いアルペジオを全調で練習します。

多様な位置

4つのポジションのアルペジオを練習します。

4つめのポジションは、指番号が調によって3つのグループに分かれます。

B.七の和音

1.属七の和音

準備練習をした後、4オクターブの長いアルペジオを全ての調で練習をします。

2.減七の和音

こちらも同じく準備練習をした後、4オクターブの長いアルペジオを全調で練習します。

C.分散和音が広がった形

練習に役立つ分散和音のパターン練習が1〜25番あります。

第6部 連続音(トレモロ)

同じ鍵盤で指を変える(同音連打)練習が1〜13番あります。

この後、「手を落とす練習」「左右交互の組み合わせ」「手首を振る練習」と様々な練習に続きます。

第7部 3度、4度、6度の重音

2本の指を同じ高さまでひきあげて、そろって落ちるように弾くと注意書きの後に、それぞれの練習に入ります。

3度の重音(1〜26)

4度の重音(27〜29)

6度の重音(30〜33)

第8部 3度、6度、オクターブの重音階

A.3度、6度、4度の重音の音階練習

3度、6度の重音で音階を弾く練習を全調でおこないます。

その次に右手で4度の重音で音階を弾きます。

最後にオクターブの音階を全長で弾きます。

B.半音階

重音で半音階を弾く練習です。

短3度、長3度、完全4度、増4度、短6度、長6度の重音でそれぞれ半音階を弾きます。

第9部 はぎれのよい重音と和音

スタッカートの重音の練習です。

以上「プレディーピアノ教本」の詳細を解説しました。

最後にテキストの概要です。

テキスト概要

  • プレディーピアノ教本
  • 著者:ルイ・プレディー(Louis Plaidy)
  • 出版:全音楽譜出版社
  • 訳註:平尾妙子

楽しいピアノライフを!

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執筆者

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Kinako

ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。

中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。

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