今回はル・クーペ著、安川加寿子校訂の「ピアノの練習ABC」を紐解いていきます。
前編の今回は内容を詳しく見ていきます。
ル・クーペ著「ピアノの練習ABC」
著者であるル・クーペは、1811年にパリで生まれたピアニスト・作曲家です。ショパンと同時代に活動したピアニストです。
原題は「L'Alphabet」で、全音出版からでている「ルクーペ ピアノのアルファベット」と今回紹介するテキストはタイトルは違いますが、元版は同じ「L'Alphabet」です。
「ピアノの練習ABC」の日本での初版は1952年です。
使うのはいつ?
校訂者の安川加寿子さんは、「メトードローズ」を終わった人が次に学ぶテキストとして最適だ言っています。
その他「バイエル」などの導入から初級のテキストを終えて楽譜のルールを一通り覚えて読むことができるようになった段階で、難なく使うことができます。
並行して同じく安川加寿子さんが編纂した「ピアノのテクニック」を使用することが進められています。
多くの曲が、1オクターブ以内に収まる右手の旋律と、基本的な和音からできた左手の伴奏で構成されています。
(ただし18番は左手が右手の上を超えて高い音を弾くこと、22番は旋律的な低音からできているので例外です。)
大きく跳躍する音や、ポジションの頻繁な移動、複雑な声部の絡みなどは少ないです。
ブルグミュラーの前半程度と言えます。
次に内容を見ていきます。
A~Zの25曲
各曲のタイトルがAからZまでアルファベットになっていていて(Jはない)全25曲です。
どの曲も20〜40小節と1ページに収まる短い曲です。
後半にいくにつれて曲が長くなっていきます。
多くの曲がABAの三部形式です。
調性
24曲が長調の曲で、1曲のみイ短調があります。
調号は#は4つまで、♭は3つまで登場します。
拍子
拍子は4/4拍子が多いですが、3/4、2/4、3/8、6/8拍子の様々な曲があります。
変拍子は登場しません。
速さ
各曲には「Allegro」や「Andante」などの記号とともに、メトロノームの速さも記載されています。
巻頭の「はじめに」に練習の前に注意することとしてこの速度記号と拍子記号、調性を確認してから弾きはじめるようにと書かれています。
予備練習
それぞれの曲の前に7小節からなる予備練習が付いています。
予備練習では、そのあとに弾く曲の調性で音階、重音、スタッカート、トリルなどの練習をします。
曲の内容と呼応しているものが多いですが、必ずしも対応しているわけではありません。
曲の調性に慣れるための短い練習曲という形です。
この予備練習は、必ず2小節のカデンツァの和音で終わります。
様々なカデンツァを弾く練習にもなります。
各曲に短い解説文
A~Zの曲には、校訂者の安川加寿子さんによる短い解説文か書かれています。
テクニックのポイントや演奏上の注意点がまとめられています。
以上、内容を見てきました。
後半では、こちらのテキストのポイントを紹介します。
執筆者
ピアノ講師・ピアノ演奏家のピアノレッスンズ。
自宅教室で指導の傍ら演奏活動を行う。
「自分で奏る喜びをたくさんの人に」をテーマにwebサイト「ピアノ・レッスンズ」を運営。
中高教員免許(音楽)取得。
チャイルドカウンセラー取得。