今回はグレン・マック著の「誰でもできるピアノ即興演奏 インプロヴィゼーションの冒険」を紐解いて行きます。
ピアノ即興演奏のアイディア集のようなこちらのテキスト。
後編ではその魅力や使うときのポイントを紹介します。
こちら↓の前編では内容を詳しく見ているので併せてご覧ください。

ポイント1:即興演奏の視点で音楽を分解していく
楽譜を頼りに演奏してきたピアノ奏者にとって、即興演奏が意のままにできるようになるのは途方もなく遠い道のりのように感じます。
このテキストは、即興演奏ができるようになるということを目標に、音楽の構造を分解して紐解いていくように構成されています。
音楽の基本的な素材を使い、それらを理解しながら即興演奏を意義ある想像的な一つ一つの冒険にしていく本です。
ピアノは鍵盤を沈めれば音がなるので、ピアノの前に座り音を鳴らせばすぐに即興演奏になります。
それを「意義ある想像的」な形にしていくために音楽を構成する要素をアイディアとして一つずつ実践していきます。
解説されている中身は音楽理論が中心です。
音楽理論をどのように即興演奏に繋げるかという目的で学び、実践していきます。
ポイント2:即興的な取り組み方を身につける
もっとも大事だと思われるのは、音の聞き方、ピアノへ向かう態度です。
冒頭の「即興演奏で気をつけること」をよく読んで、楽譜を読んで演奏する時とは違う取り組み方を実践することで効果が得られます。
即興演奏で気をつけることをまとめると以下の8つです。
- 常に耳でひくこと
- 聞いた曲を真似して弾いてみる
- 怖がらずに簡単な曲を一音ずつ鍵盤の上で弾いてみる
- 作曲はしない(作曲と即興演奏の技法をまぜこぜにしない)
- 即興しているときは、止まったり、弾き直したり、音を全部覚えたり、失敗を気にしたりしない
- 気に入った素材でも同じものを何度も繰り返さない
- 何をさておき、常に先に進む
- 学ぼうとせずに自分の機知(考え)を信じる
ピアノの前に座った時にいつものように演奏をすることから脱し、即興演奏につながるピアノとの向かい方を身につけていきます。
60ページと薄いテキストですが非常に濃い内容です。
ポイント3:リトミックや音楽遊びの先生に
具体的には、特に子どもの音楽指導の場面で役に立つ情報があります。
レッスン5と6では、そのような場面を想定して体の動きと関係した即興の例題が掲載されています。
このテキストに足りないところ
- タイトルに「誰でも」と書いてあるが、テキストの内容は楽譜を読めることと、ピアノをある程度弾けることが前提。導入や初級者向けに書かれてはいない。
こんな人におすすめ
- 楽譜を見て演奏をしてきたけれど、即興演奏にも興味がある人
- リトミックの先生
- 幼稚園や小学校で音楽を指導する立場の人
テキスト概要
- 「誰でもできるピアノの即興演奏 インプロヴィゼーションの冒険」
- 著者:グレン・マック Glenn Mack
- 訳・解説:中村菊子・渡辺寿恵子
- 1970年出版(英語版)、1994年日本語版初版
- 全音楽譜出版
- 併用テキストなし
楽しいピアノライフを!


