今回は、アーメン・ドネリアン著「イヤー・トレーニングvol.1」を紹介します。
どのようなテキストなのでしょうか。
後編では実際に使用して感じたポイントを詳しく見ていきます。
前編↓では内容を詳しく紹介していますので、併せてご覧ください。

ポイント1:理論と聞こえる音を繋げるトレーニング
このテキストで行うイヤートレーニングは絶対音感をつけるものとは違い、音階とコードをもとに音を相対的に聴く訓練をするものです。
脈絡なく鳴らされた音をクイズのように当てるのではなく、曲の中で使われる理論と、そこで聞こえてくる音を紐付けるためのトレーニングをします。
必要な理論の解説をしながら進んでいくので、音階やコードについては完全に理解していなくてもテキスト内で学ぶことができます。
ポイント2:方法はとにかく歌うこと!
イヤートレーニングの方法はとにかく歌うことです。テキストの中で何度も歌うことの重要性が強調されています。
付属のCDは課題をキーボードで演奏した音と英語による解説が収録されていますが、聞き流してトレーニングするものではありません。
その音源をお手本に、もしくは自分で演奏して音を確認し、実際に自分で発声して正しい音を出すことが耳の訓練につながります。
自分の体を使って音をコントロールすることを通して聴覚のレベルアップを目指します。
ポイント3:ドレミではなく数字で歌う
他のイヤートレーニングやソルフェージュのテキストと違ってユニークな点は、歌う時に「ドレミ」ではなく数字で歌います。
音階の度数(スケール・ファンクション・ナンバー)や和音の度数(コード・ファンクション・ナンバー)をシラブルとして歌います。
「ワン、ツー、スリー・・・」、「いち、に、さん・・・」というように数字を歌うことで、理論的に理解を深めることができるといいます。
ポイント4:タッピング(叩く)によるリズム練習がある
テキストは12のLESSONで構成されていますが、各レッスンにはリズムの練習課題があります。
二段に書かれた音符を上は右手で、下は左手で机などを叩くリズム練習です。
ただ音符のリズムを読む練習というわけではなく、リズムの持つエネルギーや重要性を理解して手順に沿って練習します。
タイムの乗った正確なリズムを刻めるように練習します。
ポイント5:レベル・アップに必要な言葉が散りばめられている
課題の楽譜が並んでいるだけではなく、ジャズプレイヤーでありイヤートレーニングのカリキュラムで教鞭をとっている著者による言葉が読み応えがあります。
練習する際の手順や注意するべきことも詳細に書かれています。
より効果が上がる方法や、音楽の本質を見失わないような取り組み方が、適度に散りばめられています。
このテキストに足りないところ
- 数字で歌う時に#や♭をどのように発音するのか書かれていない。例えばC#もC♭もCも全て同じ「1」として歌う場合、そこの違いを認識しづらい。
- ある程度の楽典の知識が必要。ト音記号ヘ音記号の音符が読めて、音階と音程の知識があることが前提。
こんな人におすすめ
- ジャンル問わず聴く力を伸ばしてレベルアップをしたい音楽をやっている方
- 音階やコードの知識を学びながら聴く力を伸ばしたい方
- 音楽家としてレベルアップしたいけれど何からやったらいいかわからない方
テキスト概要
- 「イヤートレーニング」vol.1
- 著者:Armen Donelian
- 翻訳:井上 智
- 1992年出版(英語版)、2001年日本語版初版
- 株式会社エー・ティー・エヌ
- 「イヤートレーニング」vol.2があるが日本では出版されていない。
- 付属CD2枚
楽しいピアノライフを!



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