初心者からでも演奏できる多くの魅力的なピアノ作品を残している作曲家ギロックによるピアノ導入のメインテキストです。
曲の魅力・理論・技術が詰まっています。
前編では、各巻の内容を紐解いていきました。
後編では、その内容を踏まえて、ポイントをご紹介します!
前編はこちらからご覧ください↓
ポイント1:無駄のないワークブック形式の学習
イラストがなく、文章と図解による説明が多めです。
一つずつの曲に学ぶことがはっきりしていて、無駄がなく、目的がタイトに絞られています。
レベル2までは各曲に練習プランがあり、リズム打ちをしたり、小節数を数えたり、ただ弾くだけではなく、まず楽譜を眺めることで、1曲から無駄なく多くのことを学びます。
書き込むことも多く、ワークブックのような形になっています。
繰り返し練習による定着などをせずに、無駄なく5巻にギッシリと内容が凝縮されています。
ポイント2:全調メソッド
全調メソッドとは、導入期に24全ての調を順序立てて取り入れる方法です。
ト音記号の横に#や♭が6、7個つく調まで無理なく弾いていくメソッドで、今ではバスティンシリーズで採用されていることで有名です。
例えば、導入テキストとして有名な「バイエルピアノ教本」では、ほとんど調の変化はありません。
後半になって#4つ、♭2つまで数曲でてきますが、ほとんどの曲をハ長調で弾きます。
その影響か、バイエルで育った人は#や♭がつくと難しいと感じるというように言われています。
全調メソッドでは、早い段階から手の形、鍵盤の場所をきっかけとして、いろんな調を学んでいきます。
そうすることで、#や♭が多い曲への抵抗が減り、いろんな響きの曲を体験することができます。
ポイント3:理論と技術を一歩ずつ身につける
ギロックがピアノメソードを書いた大きな柱として「理論と技術を一歩ずつ身につける」ということを挙げています。
理論も技術も漏れなく、細かいステップを経て着実に進めていきます。
難しいことに急に飛躍したり、同じ内容を何度も無駄に繰り返すということがありません。
また説明がないままに新しいことが出てきたりということもありません。
文章や図解によって、一歩ずつ理解しながら進むことができるようになっています。
ポイント4:ギロックの曲で学んでいく
学んでいく曲がギロックが作曲したものがほとんどで、とても魅力的です。
退屈な曲がなく、変化に富んでいて親しみやすいものばかりです。
ギロックがピアノメソードを書いた大きな柱として
「“弾いてみたい”と思わせる音楽性の深い作品と取り組む→感性を育てる」
ということを挙げているように、
練習曲といえど、どの曲も味わい深く、何度も弾きたくなるものばかりです。
豊かな響と、弾きやすさの両方を合わせているテキストです。
余談ですが、テキストを5冊並べるとカラフルできれいです。
1Aから順に下のカラーが減るようにデザインされています。
装丁のデザインにもこだわりを感じます。

このテキストに足りたいところ
- イラストがなくカラフルではないので、小さい子の目を引くつくりはされていない。
- 文章が多いので、幼児が自宅で一人で使用するのは難しいかも。
- 少しずつ進んでいくが、無駄なくスリムな作りでドリルのような、同じことを何度も繰り返し定着することは想定されていない。
- 繰り返して定着させたい場合には、他のテキストなどを併用することおすすめ。
こんな人におすすめ
- ギロックの曲が好きな人
- 理論も技術も抜かりなくしっかり築きたい人
- イラストなど視覚的な刺激は必要ない人
- 昔ピアノをやっていたけれど、理論の勉強も一緒にやり直したいという人
- 無駄なことはやりたくない大人のビギナーの人
テキスト概要
- 「ギロック・ピアノメソード ピアノ・オール・ザ・ウェイ!」 1A、1B、2、3、4
- 全音出版社
- 1969年出版(日本は2002年)
- 著者:ウィリアム L. ギロック
- 訳・解説:安田裕子
- レベル:導入〜初級レベル



楽しいピアノライフを!